空馬

競馬における空馬：制御を失った競走馬の危険と扱い

競馬において、空馬（からうま）とは、騎手が落馬した際に鞍上に人が乗っておらず、制御されていない状態の競走馬を指します。騎手は、簡素な鞍と鐙を用いてやや不安定な姿勢で馬に乗っているため、馬がバランスを崩したり、急激な動きをしたりすると容易に落馬し、空馬となります。

競走中の空馬

競走中に空馬が発生した場合、馬は様々な行動をとります。その場で停止したり、馬群から離れて逸走したり、そのまま走り続けたりと予測不能です。特に危険なのは、空馬がそのまま走り続けるケースです。2017年以降のルール変更により、落馬地点での再騎乗や、落馬地点への復帰は認められていません。そのため、空馬が走り続けた場合、その馬は競走中止となり、たとえ先頭でゴールしても1着とはならず、賞金や馬券の払い戻しは行われません。

空馬は騎手の制御を受けていないため、他の馬を妨害しても騎手への制裁はありません。同様に、妨害された馬への救済措置もありません。予想外の動きをする空馬は、接触事故や多重落馬の危険性を高めるため、他の騎手は細心の注意を払ってレースを進める必要があります。

競走前・競走後の空馬

一方、競走前（発馬機からのスタート前）に空馬が発生した場合、再騎乗すれば通常通り競走が続けられ、賞金や馬券の配当も支払われます。ただし、空馬がコース内外を放馬して馬体に著しい疲労が生じたり、故障が疑われる場合は馬体検査が行われ、競走除外となることがあります。この場合は競走中止ではなく、レース終了後にその馬が絡む馬券がすべて返還されます。競走終了後に空馬が発生した場合も、馬体検査は行われませんが、競走中止とはならず、入線順位に応じた払い戻しが通常通り行われます。

空馬の確保

空馬が発生した場合、騎手や厩務員がハミや腹帯を捕まえて馬を確保します。しかし、馬が暴れたり逸走したりする場合は、競馬場の従業員や警察、保健所などが捕獲作業にあたります。競走開始前に空馬が発生すると、確保作業のため競走開始が遅れることもあります。特に競馬場外での逸走は一般人の安全に重大な影響を与えるため、迅速な対応が求められます。

空馬となった競走馬の例

空馬は騎手の制御がないため、効率の悪い走行になりがちですが、騎手の体重がない分だけ軽いため、他の馬よりも速くゴールすることもあります。2008年のエリザベス女王杯では、ポルトフィーノが空馬のまま1位でゴールしましたが、記録上は「競走中止」です。これはGI競走における初の、そして2023年現在唯一の空馬による1位入線となっています。他にも、天皇賞（秋）を制したギャロップダイナ（1985年札幌日経賞）、ワイドバトル（1993年京阪杯）などが空馬で先頭ゴールした例として知られています。障害レースでは、コース外への逃走や、他馬との接触事故などが発生する危険性があります。

まとめ

空馬は競馬における大きなリスクであり、その発生を防ぐための対策や、発生した場合の安全確保、迅速な対応が不可欠です。空馬に関するルールや対応は、安全性を確保し、公正な競走を行うために重要な要素となっています。今後、空馬発生時のリスク軽減や、より安全な競馬運営のための更なる改善が期待されます。

もう一度検索