窪田暁子

窪田 暁子

社会学および福祉学の分野で日本の学術界に貢献した窪田 暁子（くぼた きょうこ）は、1928年4月1日に大阪府で生を受け、2014年4月24日に86歳でその生涯を閉じました。

経歴と学び

窪田は1948年に東京女子高等師範学校（現在のお茶の水女子大学の前身）を卒業後、日本YMCAでの勤務を通じて実務経験を積みました。その後、1952年から1954年にかけて渡米し、ラトガース大学およびミネソタ州立大学大学院で学びを深めます。この米国滞在中、ソーシャルワークの大家であるギゼラ・コノプカのもとでグループワークの手法を修得した経験は、彼女のその後の研究活動における重要な礎となりました。

帰国後も、窪田は社会事業学校、青少年団体、地域福祉センター、精神病院など、多様な福祉の現場や関連機関での勤務を経験しました。これらの幅広い実務経験は、机上の理論に留まらない、現実の課題に根差した洞察力と実践的な視点を培う上で極めて有益でした。

大学教員としての活動

1968年からは、大学の教壇に立つことになります。まず日本福祉大学の助教授として着任し、次いで東京都立大学の教授を務めました。東京都立大学を1990年に定年退官した後も、教育・研究への情熱は衰えることなく、東洋大学教授、そして中部学院大学教授として後進の指導にあたりました。中部学院大学では、長年の功績を称えられ、名誉教授の称号が授与されています。

大学での教育活動において、窪田は数多くの学生を指導しました。その中には、後に東京都立大学で教授を務めた和氣純子氏などがいます。教育者としても、多くの福祉専門職や研究者を育成することに尽力しました。

研究と著作

窪田の研究は、社会福祉、特にグループワークに重点が置かれていました。彼女の代表的な著作である『グループワーク』（1969年）は、日本の福祉実践におけるグループワークの普及と定着に大きく貢献しました。

晩年においても、福祉やケアに関する深い思索を続け、『小春日和の午後に ケアの思想を読む』（1998年）ではケアの思想について考察を深めました。また、『福祉援助の臨床 共感する他者として』（2013年）では、支援者と被支援者の関係性における共感の重要性や、実践現場における臨床的な視点を重視する姿勢を示しています。

共編著としては、高城和義氏と共に編纂した『福祉の人間学 開かれた自律をめざして』（2004年）や、市川恵美子氏、玉井邦夫氏との共著である『ていねいな相談活動とは』（2006年）があります。これらの著作からも、人間中心の福祉実践や、丁寧な相談支援のあり方に対する彼女の関心がうかがえます。

さらに、窪田は海外の優れた福祉理論を日本に紹介する役割も担いました。ギゼラ・コノプカの主要著作の一つである『非行少女の心理』（1970年）を服部広子氏と共訳したことは、日本のソーシャルワーク実践に大きな影響を与えました。D.チャリスとB.デイヴィスによる『地域ケアにおけるケースマネジメント』（1991年）を田端光美氏と共訳するなど、時代と共に変化する福祉ニーズに応じた新たな支援モデルの紹介にも積極的に取り組みました。

まとめ

窪田暁子は、多様な実務経験で培った知見と、国内外での学術研究を融合させ、日本の社会福祉学、特にグループワークの理論と実践の発展に貢献しました。教育者、研究者、そして翻訳者として、その生涯を通じて社会福祉の向上に寄与した功績は大きいと言えます。彼女の研究業績は、人文学報に掲載された略歴・業績目録などによって確認することができます。

2014年に惜しまれつつも世を去りましたが、その著作や育成した多くの人材を通じて、日本の福祉界に確かな足跡を残しています。

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