田端光美

田端 光美（たばた てるみ）

日本の社会福祉学者として知られる田端光美氏は、1932年に北海道函館市で生まれ、2023年にその生涯を閉じました。長年にわたり日本女子大学で教鞭を執り、同大学の名誉教授の称号を授与されています。専門は社会福祉学、特に地域における福祉のあり方や農村部の福祉問題に深い洞察を示しました。

経歴

田端氏は1955年3月、日本女子大学の家政学部社会福祉学科を卒業後、同大学附属農家生活研究所の助手として研究者としての第一歩を踏み出しました。その後、1968年には同大学文学部の社会福祉学科専任講師に就任。着実にキャリアを重ね、1973年には助教授、そして1982年には教授へと昇任しました。教授在任中の1982年には、イギリスのグラスゴー大学社会科学部に客員研究員として招聘され、海外での研究経験も積んでいます。1990年には、学部の改組に伴い、日本女子大学人間社会学部の教授となりました。

2001年に日本女子大学を定年退職した後も、その研究者としての情熱は衰えることなく、同大学の名誉教授として後進の指導にあたるとともに、北九州市立大学社会システム研究科教授や北海道浅井学園大学人間福祉学部客員教授を歴任し、各地で教育・研究活動を続けました。また、2004年には「イギリス地域福祉の形成と展開」と題する論文により、東洋大学から博士（社会福祉学）の学位を取得しています。

研究分野と業績

田端氏の研究は、日本の農村における社会福祉の実態や、イギリスの地域福祉システムの歴史的展開と現状分析に特に力を注がれました。これらの研究成果は、多くの重要な著作として結実しています。また、海外の福祉に関する知見を日本に紹介するため、翻訳活動にも積極的に取り組みました。

主な著作・訳書・監修

田端氏の学術的な貢献は、以下の単著、共編著、翻訳、監修といった形で広範に及びます。

単著

『日本の農村福祉』 勁草書房, 1982年
『坂と海と』 ドメス出版, 2001年
『イギリス地域福祉の形成と展開』 有斐閣, 2003年

共編著

『地域福祉論』 建帛社（社会福祉選書）, 2001年（編著）
『新・セミナー介護福祉 家政学概論』 ミネルヴァ書房, 2002年（一番ケ瀬康子氏、江澤郁子氏と共編）
『エンサイクロペディア社会福祉学』 中央法規出版, 2007年（岡本民夫氏、濱野一郎氏、古川孝順氏、宮田和明氏と共編、仲村優一氏、一番ヶ瀬康子氏、右田紀久恵氏監修）
『一番ケ瀬社会福祉論の再検討 生活権保障の視点とその広がり』 ミネルヴァ書房, 2013年（岩田正美氏、古川孝順氏と共編著）

翻訳

ノーマン・ジョンソン著 『イギリスの民間社会福祉活動 その歴史と現状』 全国社会福祉協議会, 1989年（監訳）
ピーター・デカルマー、フランク・グレンデニング編著 『高齢者虐待 発見・予防のために』 ミネルヴァ書房（Minerva福祉ライブラリー）, 1998年（杉岡直人氏と共監訳）

監修

『ケア・福祉のしごとまるごとガイド』 ミネルヴァ書房, 1999年

これらの著作や活動を通して、田端光美氏は日本の社会福祉学の発展、特に地域福祉や農村福祉研究において重要な足跡を残しました。その研究成果は、現代の社会福祉を考える上で今なお多くの示唆を与えています。

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