竇黙

竇黙の生涯と業績

竇黙（とう もく、1196年 - 1280年）は、13世紀に活躍した大元ウルスの官僚です。彼は洺州肥郷県出身で、幼少期から学問に親しみ、儒学に専念することを望んでいました。しかし、彼の運命はモンゴル軍の金朝侵攻により大きく変わりました。この戦乱の中、彼は捕虜となりますが、幸運にも一人だけ逃げ帰ることに成功しました。郷里に戻ると、彼の家は破壊され、母も衰弱した状態で亡くなってしまいます。

1232年、再びモンゴル軍が侵攻すると、彼は母方の親族を頼りに黄河を渡ります。そこで医学を学び、その後蔡州に移住し、名医の李浩に師事して針治療を学びました。この時期、彼は医術を通じて地域の人々に貢献していました。しかし、混乱の時代が続き、竇黙は徳安に移ることになります。この地域では儒教、道教、仏教の人材が求められており、彼は元の帝国に仕える決意を固めました。

さまざまな人との交流を経て、竇黙は姚枢や許衡らと共に学問を深めていきました。1250年代には、モンケが任命した皇弟クビライに召し出され、竇黙の名声はさらに広まりました。当初、彼は本名を隠して逃げようとしましたが、友人の説得により仕官することとなります。その後、クビライに政治の道を説き、重用されます。この時、彼の推薦を受けて姚枢も登用されることとなりました。

中統元年、モンケ・カアンの死を受けてクビライが皇帝に即位し、竇黙は再び上都に呼ばれます。彼は、優れた人材の選考に関与し、さらには中書省の組織改革にも参加しましたが、王文統の人事を巡って対立し一時期不遇となります。それでも、彼の洞察力が後に認められ、再び国政に関与することとなります。

後年、竇黙は翰林院に配属され、見識を活かし続けました。1275年には80歳を迎え、実務からは退くこととなりますが、クビライからはしばしば行動について問い合わせがあるなど、その評価は高かったです。そして、1280年に85歳で亡くなるまで、彼の存在は大元ウルスにおいて重要な役割を果たしました。

彼の治世における影響は計り知れなく、クビライは「朕は賢者を30年に渡って求めたが、竇漢卿（＝竇黙）と李俊民の2人を得たのみである」と称えています。竇黙の業績は後世に大きな影響を与え、彼の息子も大元ウルスに仕官し、集賢大学士となるなど、竇家の名声は継承されていきました。

参考文献

• - 『元史』巻158列伝45竇黙伝
• - 『新元史』巻157列伝54竇黙伝
• - 安部健夫『元代史の研究』創文社、1972年
• - 宮紀子『モンゴル時代の「知」の東西』名古屋大学出版会、2018年

もう一度検索