立川文庫

立川文庫（たつかわぶんこ）について

立川文庫は、1911年から1924年の間に立川文明堂によって刊行された文庫[[本]]シリーズです。このシリーズは、「書き講談」として知られる特異な形式で小冊子が作られ、特に当時の少年たちや商店員の間で幅広い人気を博しました。立川文庫が扱った作品には、歴史上の人物や伝説の忍者が登場するものが多く、『真田幸村』や『猿飛佐助』、そして『霧隠才蔵』などが特に有名です。

立川文庫の創設と背景

1890年代には、講談を速記した本が流行していました。その流れの中で、旅回りの講談師である玉田玉秀斎の妻・山田敬の連れ子である山田阿鉄（山田酔神）が、速記者を介さずに直接講談を筆記する「書き講談」を考案します。この独自のアイデアは、大阪の主要な出版社に持ち込まれましたが、ほとんどの出版社が関心を示さなかった中で、唯一立川熊次郎がこの企画を受け入れ、1904年に立川文明堂を設立しました。

この文庫[[本]]のデザインは、当時流行していた袖珍文庫のスタイルを模倣し、コンパクトでありながらも魅力的な装丁がされていました。縦12.5cm、横9cmのサイズで、定価は25～30銭程度と設定されていましたが、実際には10銭前後で販売され、多くの人々に手に取りやすい価格帯になっていました。特にその表紙の模様が「胡蝶」であったことから、「いちょう本」と呼ばれる袖珍文庫に対して「こちょう本」として親しまれました。

読者層と作品内容

立川文庫は主に子供たちを対象にしており、その内容は講談や歴史物語、戦記に関するものが多く含まれていました。特に、大坂の陣で戦った真田幸村や、その家臣にあたる猿飛佐助、霧隠才蔵といった武将や忍者の物語が人気を集め、彼らの存在を実在するような印象を持たせることで多くの読者を惹きつけました。当初、玉秀斎が語る講談を書き取っていた阿鉄は、次第に要約を元に新しい物語を作り出すようになりました。

文庫の発展と影響

立川文庫は、1911年から200篇以上を発行し、多くは古本との交換制度を導入するなどし、小中学生の間で大ヒットを記録しました。立川文庫の影響を受けて、様々な出版社が類似の文庫シリーズを立ち上げ、赤本出版社の博多成象堂や岡本偉業館の史談文庫、榎本書店の英雄文庫などが登場しました。この影響はさらに広がり、立川文庫のスタイルを取り入れた作品が大正期の文芸や大衆文学、そして時代劇にも多大な影響を与えました。

人気作品とその特色

中でも立川文庫の中で最も人気だった作品は『猿飛佐助』で、1913年に発行されました。この作品は、真田三代記などから発展した新しいキャラクターが描かれ、阿鉄や他の作家たちによって新たに形作られた人物たちが、輝かしい活躍を見せます。これらの物語は、従来の勧善懲悪的な構図にとらわれず、より人間味あふれるキャラクターが描かれており、それが多くの読者に受け入れられました。

このように、立川文庫はただの文庫[[本]]シリーズにとどまらず、日本の大衆文化における重要な位置を占めており、今なおその影響を考察することができます。

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