立松ふさ

立松ふさ（1891年3月23日 - 1992年11月16日）は、日本の声楽家であり、音楽教育者、作曲家としても知られています。彼女はソプラノ歌手として、また武蔵野音楽大学の名誉教授として、日本の音楽界に多大な貢献をしました。旧姓は薗部で、房子と表記されることが多いですが、フサと表記されることもあります。

生い立ちと音楽の道へ

東京府亀戸で、警察官の薗部久五郎の長女として生まれた立松は、東京府立第一高等女学校を卒業後、東京音楽学校（現：東京藝術大学音楽学部）に進学しました。ここでは、ハンカ・シェルデルップ・ペツォルトや宮廷歌手ヘルマン・ヴーハープフェニッヒといった著名な声楽家に師事し、1913年に同校本科声楽部を卒業しました。卒業後も音楽への情熱は衰えることなく、1915年からは東京音楽学校で声楽講師として教鞭を執り始めました。

教育者としての活動

立松は教育者としても精力的に活動しました。1925年には私立東京女子体操音楽学校（現：東京女子体育大学）で講師を務め、1928年には武蔵野音楽学校（現：武蔵野音楽大学）でも教鞭を執るようになりました。1952年から1968年まで武蔵野音楽大学教授を務め、多くの音楽家を育てました。退職後は武蔵野音楽大学名誉教授となり、後進の指導に尽力しました。

声楽家としての活躍

声楽家としての立松は、国内外で幅広い活動を展開しました。1927年には函館で演奏会を開催し、1928年には長崎の南座で「立松房子一行大演奏会」を成功させました。また、レーヴェ夫人主催の女流声楽家大演奏会にも出演するなど、数々の舞台でその美しい歌声を披露しました。

指導した音楽家たち

立松の指導を受けた音楽家には、関鑑子、渡辺はま子、藤原フサヱ、比留間きぬ子、小川寛興、本倉雅子など、その後の音楽界を牽引する多くの人材がいます。彼女の教育者としての卓越した能力が伺えます。

晩年と死後

1992年11月16日、立松ふさは101歳で生涯を閉じました。翌年の1993年7月には、「立松ふさを偲ぶ会」演奏会が開催され、その功績を偲びました。

受賞歴

1968年には、長年の音楽教育への貢献が認められ、勲四等瑞宝章を受章しています。

家族

夫は司法官の立松懐清で、朴烈事件の予審判事を務めました。次男は読売新聞記者の立松和博で、昭和電工疑獄や造船疑獄をスクープしましたが、後に不遇な最期を遂げました。立松の家族の歴史も、彼女の人生に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

エピソード

1927年頃、立松が花巻で独唱会を開催した際、夫の立松判事が職務上の事件で世間から注目を集めていたため、同情を集めていました。その際、宮沢賢治が手作りの花を少女に託して立松に渡したというエピソードは、彼女の人となりを物語るものとして語り継がれています。

レコード録音と寄稿

立松は、グノーやマスネ、シューベルトなどの歌曲を数多く録音しました。また、「主婦の友」や「婦人倶楽部」などの雑誌に、子育てや音楽に関する寄稿も多数残しています。

楽譜

彼女は作曲家としても才能を発揮し、竹久夢二の装画と北原白秋、西條八十の詩による楽譜を出版しています。これらの楽譜は、彼女の多才ぶりを示す一例と言えるでしょう。

立松ふさは、声楽家、教育者、作曲家として、日本の音楽界に多大な足跡を残しました。その生涯は、音楽への情熱と教育への献身に満ち溢れており、後世に大きな影響を与え続けています。

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