立花種恭

立花種恭：激動の時代を生きた大名から教育者、そして貴族院議員へ

立花種恭（たちばな たねゆき）は、江戸時代後期から明治時代にかけて活躍した、波乱に満ちた生涯を送った人物です。陸奥国下手渡藩の第3代藩主として始まり、その後筑後国三池藩主を経て、廃藩置県を経験しました。

種恭は天保7年（1836年）、立花種道の長男として誕生しました。2代藩主・立花種温の養子となり、家督を継ぎました。その後、所領を交換する形で筑後三池藩へと移りました。

幕末の動乱期においては、佐幕派として活躍しました。徳川家茂の側近として重用され、大番頭、若年寄、そして老中格兼会計総裁と要職を歴任しました。しかし、慶応4年（1868年）3月には罷免されています。

戊辰戦争では、下手渡藩と三池藩で意見が大きく対立しました。下手渡藩の一部は奥羽越列藩同盟に参加した一方、種恭はすでに新政府への恭順を決めており、京都にいました。この状況は同盟側に知られ、仙台藩から攻撃を受け、下手渡陣屋は焼失しました。その後、種恭は新政府の命により三池に移りました。

明治2年（1869年）の版籍奉還により知藩事となり、明治4年（1871年）の廃藩置県で退任しました。その後も、種恭は重要な役割を担い続けました。明治10年（1877年）から明治17年（1884年）にかけては、学習院初代院長を務め、教育者としての顔も持ちました。

学習院院長としての功績は多大であり、特に講道館創始者である嘉納治五郎は種恭の部下でした。種恭が揮毫した『講道館』の扁額は、当時の講道館道場に掲げられていたと伝えられています。この逸話は、種恭の教育者としての姿勢と、柔道との関わりを示唆しています。

明治17年（1884年）には子爵に叙爵され、明治23年（1890年）には貴族院議員に選ばれました。華族会館副幹事、同学務局長、宮内省御用掛、同省爵位局主事など、数々の要職を歴任しました。

明治38年（1905年）に70歳で死去しました。

種恭の生涯は、激動の時代を生き抜き、大名から教育者、そして貴族院議員へと変遷した、興味深く複雑なものです。佐幕派としての活動、廃藩置県後の対応、そして学習院での教育活動など、それぞれの局面において、彼は時代に合わせて柔軟に対応し、その手腕を発揮しました。その功績は、現在もなお高く評価されています。彼の生き様は、近代日本の形成期を理解する上で貴重な資料となっています。

家族
実父：立花種道
養父：立花種温
妻：牧野辰子（牧野節成の三女）
子女：立花種政（長男）、立花種忠（次男）、立花敬子（子爵渡辺寛綱夫人）

栄典
1884年（明治17年）7月8日：子爵
1905年（明治38年）1月20日：御紋付御杯
1905年（明治38年）1月30日：従二位

関連作品
テレビドラマ『徳川慶喜』(NHK大河ドラマ)
* テレビドラマ『青天を衝け』(NHK大河ドラマ)

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