立花貞二郎

立花貞二郎（たちばな ていじろう）

立花貞二郎は、1893年に東京で生まれた日本の女形俳優で、元子役としても知られています。彼は1918年に25歳で亡くなるまで、短い生涯の中で多くの人々に感動を与えました。彼の存在は、サイレント映画時代の日本映画界に多大な影響を与え、多くのファンを魅了しました。

生い立ちと初期のキャリア

立花は東京府浅草区で生まれ、家族には著名な歌舞伎役者の中村富之亟がいましたが、兄は幼い頃に不幸な事故で亡くなっています。初舞台は幼少期に、中村芝鶴のもとで経験しました。彼が本格的に舞台に立ったのは1905年、12歳の時です。当初は歌舞伎の名を借りて中村芝鷺や中村芝鷺助として活動しましたが、後に新派へと転向しました。

1909年には吉沢商会で映画界にデビューし、映画業界でもその才能を発揮することになります。その後、いくつかの商会の合併に伴い、日活の設立に加わり、日活向島撮影所での活動が始まりました。

映画での成功

立花は1913年の『やどり木』から始まり、その後『花の夢』や『カチューシャ』で主に主演し、急速に人気を博しました。特に『カチューシャ』は大ヒット作品となり、彼の出世作として知られるようになりました。彼の演技は薄幸のヒロイン役が多く、アメリカの名女優メアリー・ピックフォードに例えられるほどの人気を誇りました。

映画界での活躍により、立花は「日本のメアリー・ピックフォード」と称され、サイレント映画の名優として名を馳せました。彼の演技には特筆すべき才能があり、キャメラの回転音を感じ取りながら、演技のテンポを調整することで自然な動きを生み出しました。これは当時の映画技術において非常に重要な要素であり、彼の成功の一因とも言えるでしょう。

最期とその影響

1917年から持病の肺結核に悩まされつつも、彼は映画『生ける屍』に出演し、復帰を果たしました。しかし、1918年11月11日、名古屋の巡業先で亡くなります。彼の死とともに、映画界は次第に女優の導入が進み、立花が築いた時代の幕が下りることになります。彼の存在は、映画界が進化していく中での重要な一章を語り継いでいます。

エピソードと影響

立花はその俳優としての才能や風情だけでなく、同時代の文化への影響も大きかったです。『カチューシャ』が流行した頃、街中ではその歌が流行し、熱狂的なファンが現れるなど、社会現象にもなりました。南部僑一郎による当時の熱狂ぶりの証言は、まさにその頃の彼の影響力を物語っています。また、彼の死後、映画界は女形から女優へと移行し、新たな時代を迎えることとなりました。

フィルモグラフィ

• - 1913年: 『やどり木』
• - 1914年: 『カチューシャ』
• - 1915年: 『後のカチューシャ』
• - 1916年: 『洋妾の娘』
• - 1918年: 『生ける屍』

立花貞二郎は、その短い生涯の中で日本映画界における重要な存在であり、彼の名前と作品は今でも多くの人に親しまれています。

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