章綸

章綸（しょう りん）

章綸（1413年 - 1483年）は、明代に活躍した官僚です。字（あざな）は大経といい、温州府楽清県の出身です。

生涯

章綸は、章文宝と包氏の間に生まれました。1439年（正統4年）に進士に合格し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。最初の役職は南京礼部主事でした。その後、1450年（景泰元年）に北京に召還され、礼部儀制郎中に昇進します。

1451年（景泰2年）には、太平十六策という政治改革案を上奏しました。1454年（景泰5年）5月には、鍾同とともに、当時皇太子ではなかった沂王朱見深（後の成化帝）を太子に復位させるよう訴えました。この大胆な行動は、時の皇帝である景泰帝の怒りを買い、章綸は投獄されることになります。

獄中では、1455年（景泰6年）に杖罰を受けるなど苦難を味わいました。しかし、1457年（天順元年）に英宗が復位すると、郭登の上奏により、章綸は名誉を回復し釈放されます。その後、礼部右侍郎に抜擢され、英宗に重用されました。しかし、その剛直な性格が災いし、石亨や楊善といった有力者たちとは折り合いが悪かったようです。1458年（天順2年）には南京礼部右侍郎、1460年（天順4年）には南京吏部右侍郎に転任しました。

1464年（天順8年）、成化帝が即位すると、官僚たちが先帝である英宗の遺詔に基づき、皇帝の婚礼を急ぎました。章綸は、先帝が亡くなったばかりで元号も変わっていない状況から、100日間の喪に服してから行うべきだと主張しました。彼の意見は受け入れられませんでしたが、その正論は多くの人々に支持されました。

1465年（成化元年）には、両淮で飢饉が発生した際に、章綸は救荒四事という4つの救済策を上奏し、いずれも認められました。1468年（成化4年）には、息子の章玄応が不正に北京で科挙を受験したことが発覚し、章綸は弾劾の対象となります。1469年（成化5年）には、僉都御史の高明との意見対立から、両者共に辞任を申し出ますが、成化帝は章綸を許し不問に付しました。その後、南京礼部左侍郎に転任しました。

1474年（成化10年）に母が亡くなったため、章綸は故郷に帰り喪に服し、1476年（成化12年）には老齢を理由に官職を辞しました。1483年（成化19年）3月22日に病のため亡くなり、南京礼部尚書の位を追贈されました。諡は恭毅といいました。

章綸の息子である章玄応は、後に広東布政使に昇進しました。

章綸は、その剛直な性格と、民を思う姿勢から、多くの人々に尊敬されました。困難な状況でも自身の信念を貫き、正しいと信じることを主張し続けた彼の姿は、後世に語り継がれています。

参考文献

『明史』巻162 列伝第50
礼部侍郎章恭毅公神道碑銘（徐紘『明名臣琬琰続録』巻11所収）

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