競輪プログラム改革構想

競輪プログラム改革構想（KPK）とは

競輪プログラム改革構想（KPK）は、1983年4月から2002年3月まで実施された競輪の番組スキームです。業界では、Keirin Program Kaikakuの頭文字を取り、KPK（けーぴーけー）と略称されることが多く、本稿でもKPKと表記します。

KPK実施の背景

戦後、人気を博した競輪でしたが、1970年代に入ると中央競馬や競艇に売上で抜かれ、パチンコの普及も重なり、入場者数は減少の一途を辿りました。このような状況を打開するため、自転車振興会は大規模なプログラム改革を計画し、KPKが誕生しました。当時、業務部第二部部長であった源城恒人を中心にプロジェクトチームが編成され、1979年に最初の計画が発表され、調整を経て1983年に実施されました。

KPKの内容

競輪選手のランク付け

競輪では、選手の競走成績に基づいてランク付けが行われます。初期にはA級、B級、C級の3クラス制でしたが、1951年にA級とB級の2クラス制に再編され、さらに細分化されてA級4班、B級4班の「2層8班制」となりました。しかし、主催者側が上位クラスの斡旋を希望したため、A級選手の割合が増加し、1967年からはA級5班、B級2班の「2層7班制」となり、KPK実施まで維持されました。この時点で、トップ選手が属するA級の選手数が、下層クラスのB級の選手数を上回るという歪な状態となり、競輪の低迷を招く要因の一つとなりました。

当時の課題

A級戦では、最上位のA級1班と最下位のA級5班が対戦することがありましたが、両者の実力差は非常に大きく、レースの公平性に欠ける状況でした。例えば、記念競輪の準決勝では、配当が100円台になることも多く、ファンは「取りガミ」になるケースが頻発し、「競輪はやっても儲からない」というイメージが定着し、ファン離れが加速しました。また、当時の競輪場のバンク構造にも問題があり、カントが緩い「お椀」型が主流であったため、スピードが出しにくく、レースの迫力不足を招いていました。

S級の誕生

KPK制度では、A級の上に新たにS級（スター級）が設けられ、最上位級班をS級1班（S1）としました。S級は3班までとされ、選手数もS1・S2・S3を合わせてわずか430名程度という狭き門となりました。A級は4班、B級は2班とされ、3層9班制に改められました。S級戦は特別競輪、準特別競輪、記念競輪、準記念競輪に限られ、希少価値の高い開催となりました。しかし、KPK開始当初は実力伯仲のあまり、落車や失格が急増し、車券が取りにくくなったという声も上がりました。

KEIRINグランプリの誕生

KPK実施3年目となる1985年には、S1のトップクラスだけを選抜した競走としてKEIRINグランプリが開催され、競輪人気回復の大きな契機となりました。この大会を機に、S級上位クラスのレースを増発すればファンの興味を惹きつけられると確信した競輪界は、次々と新たなビッグレースを開催するようになりました。グランプリの開催は、S級を新設したからこそ実現できたレースであり、KPKの効果がようやく現れ始めたと言えます。

普通開催の低迷とKPK制度の破綻

特別競輪は売上を伸ばしましたが、次第に普通開催の人気は下降線を辿り、1990年代には赤字化が顕著になりました。S級戦をほとんど開催できない施行者が相次いで撤退するようになり、S級シリーズの年間開催節数を増やす要望が出ました。しかし、S級の選手数が430名程度と限られていたため、選手の斡旋が困難になり、直前欠場や連闘が増えるなど、KPK制度は徐々に破綻寸前の状態に陥りました。

KPKから現在の番組制度へ

KPKは級班の細分化による実力拮抗という目的は達成しましたが、ファンの要望であるS級戦の拡大には対応できませんでした。また、施行者側は記念競輪の場外拡大を希望するようになり、KPK制度下で維持されてきた記念競輪開催の前節・後節の2節6日間制が障壁となりました。そこで、KPKに代わる新たな番組スキームが求められ、S級は1班・2班の2班制に改め、選手数を大幅に拡大しました。B級は廃止され、A級に統合され、A級は3班制となりました。これらは2002年4月から実施され、KPKは廃止されました。

KPKがもたらしたもの

KPK制度は晩年に破綻をきたしましたが、現在の競輪番組スキームの基礎となっています。S級は後にオートレースにも導入され、競艇のランク付けにも影響を与え、他の公営競技にも大きな影響を与えました。

まとめ

KPKは、競輪の低迷を打破するために導入された大規模な改革でしたが、その後の制度疲弊により廃止されました。しかし、S級の創設やレース体系の変更は、競輪の歴史において重要な転換点となりました。また、KPKの理念は、現在の競輪や他の公営競技にも受け継がれており、その影響は大きいと言えます。

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