竹俣氏

竹俣氏（たけのまたし／たけまたし）は、日本の歴史において越後国を中心に活躍した氏族の一つです。その遠祖は、平安時代後期に活躍した佐々木盛綱にさかのぼるとされています。盛綱の子孫は近江源氏として栄えましたが、その庶流にあたる加地氏から分かれて越後国に入り、土着しました。竹俣氏は、この加地氏の系統から派生した庶流として興った家柄です。

鎌倉時代から戦国時代にかけて、竹俣氏は主に越後国の北部地域に勢力を持った国人領主として活動しました。この地域は「揚北」と呼ばれ、竹俣氏は同じく加地氏の庶流である新発田氏や中条氏、さらには色部氏、加地氏（本家筋）などと共に「揚北衆」と総称される有力な地域勢力の一角を占めました。彼らは、越後の守護や戦国大名である上杉氏の支配下で、その地域的な軍事力を支える存在として重要な役割を果たしました。

「竹俣」という氏姓を名乗るようになった由来については、興味深い伝承が残されています。応永20年（1413年）頃、加地氏の一族であった竹俣季綱が居館としていた北楯の竹やぶから、珍しい二股に分かれた竹が生えているのが発見されたといいます。その後、居城を現在の新潟県新発田市三光に位置する竹俣城に移した際にも、再び二股の竹が生えたと伝えられています。これらの出来事が瑞祥と見なされ、これを記念して姓を加地から竹俣に改めたとされています。この伝承は、竹俣氏の家名が自然の現象に結びついた特別な由来を持つことを示唆しています。

戦国の争乱が収まり、江戸時代に入ると、竹俣氏の多くは主家である上杉氏に引き続き仕えました。特に、上杉氏が米沢藩に移封された後は、竹俣氏もこれに従い、米沢藩の藩士となりました。彼らは藩内において侍組分領家と呼ばれる上級家臣の一つとして家系を存続させました。この米沢藩の竹俣家からは、江戸時代中期に米沢藩の財政再建や藩政改革に尽力した竹俣当綱（たけのまた つねつな）という人物が輩出されています。当綱は、名君として名高い九代藩主・上杉治憲（鷹山）のもとで改革の中心的な役割を担い、その辣腕ぶりは広く知られています。

また、竹俣氏には分家も存在しました。竹俣義秀という人物は、一時的に保科姓を名乗っていましたが、当時の有力者であった保科正之に遠慮し、実家の姓である竹俣に戻したと伝えられています。この分家は「竹俣西家」と呼ばれ、本家と同様に米沢藩の侍組分領家となりました。

竹俣氏の家系は現代まで続いており、様々な分野で活躍する末裔がいらっしゃいます。特に、メディアを通じて広く知られている人物としては、フジテレビのアナウンサーであり、かつてはプロの将棋女流棋士としても活躍した竹俣紅さんが挙げられます。

なお、「竹俣」という氏姓の読み方には二通りあります。旧米沢藩があった地域や現在の米沢市周辺では、伝統的に「たけのまた」と読まれることが多いようです。一方で、現代では「たけまた」と読む方もいらっしゃり、竹俣紅さんも「たけまた」と名乗られています。このように、竹俣氏は佐々木氏、加地氏から分かれて越後北部で発展し、江戸時代には米沢藩の重臣として藩政を支え、その歴史と伝統は現代に受け継がれています。

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