竹内利美

竹内 利美

竹内利美（たけうち としみ、1909年 - 2001年）は、日本を代表する民俗学者、歴史学者の一人です。特に日本の村落研究において社会学的な視点を取り入れた理論的なアプローチを重視し、その後の研究に大きな影響を与えました。東北大学名誉教授の称号を有しました。

生涯と業績

竹内利美は、1909年2月2日に長野県長野市で生を受けました。学問を志し、1944年に國學院大學文学部の国史学科を卒業しています。

彼の研究者としてのキャリアは、教育現場から始まりました。1929年には長野県上伊那郡内の小学校教諭として教壇に立っています。その後、研究機関や公的機関での勤務を経て、その学識と経験を深めていきました。

1940年：日本常民文化研究所に勤務
1944年：中央水産業会職員
1948年：連合軍総司令部（GHQ）の民間情報教育局世論及社会調査部顧問

これらの多様な職務経験は、後の彼の研究スタイルに影響を与えたと考えられます。特にGHQでの経験は、当時の社会状況を肌で感じる貴重な機会となったでしょう。

研究者としての主要な活躍の場となったのは、東北大学です。1951年に東北大学教育学部の講師に着任後、1952年に助教授、そして1954年には教授へと昇任しました。東北大学在職中、彼は日本の村落を対象とした精力的な実地調査を継続し、その成果を社会学的な理論に基づいて分析・体系化することを目指しました。

長年の研究活動の集大成として、1962年には「日本村落構造の研究」と題した論文により、東洋大学から文学博士の学位を授与されています。これは、村落研究における彼の功績が学術界で高く評価されたことを意味します。

1972年に東北大学を定年退官し、名誉教授の称号を得た後も、研究への情熱は衰えることはありませんでした。同年からは東北福祉大学の教授として教鞭を執り、後進の指導にあたりました。東北福祉大学は1983年に退官しています。

彼の学術的な功績は、受賞という形でも顕彰されています。1983年には河北文化賞を受賞しました。

竹内利美は2001年にその生涯を閉じましたが、彼が切り拓いた村落の社会学的研究は、今日まで多くの研究者に引き継がれています。

主な著書・共編著

竹内利美は、自身の単著に加え、多くの重要な共編著を発表しています。特に、大規模な史料集成の編纂に深く関わりました。以下にその一部を挙げます。

『小学生の調べたる上伊那川島村郷土誌』（編、1934-1936年）
『南伊那農村誌』（長田尚夫、井上正文共著、1938年）
『東北農村の社会変動 新集団の生成と村落体制』（編、1963年）
『下北の村落社会 産業構造と村落体制』（編、1968年）
『日本庶民生活史料集成』（共編、三一書房）：庶民の生活に関する貴重な史料を体系的にまとめたシリーズ。第3巻、第8巻、第9巻、第20巻、第21巻などの編纂に携わりました。
* 『信州の村落生活』（編、1976年）

これらの著書や編著は、日本の村落、農村、庶民生活に関する研究を行う上で不可欠な文献となっています。特に地域名を冠した編著からは、彼が特定の地域の詳細な実地調査を重視した研究姿勢がうかがえます。

竹内利美の研究は、単なる歴史的な記述に留まらず、現代社会にも通じる村落の構造や変動のメカニズムを明らかにする試みであり、民俗学、歴史学、社会学といった複数の分野に貢献するものでした。彼が残した業績は、日本の地域社会を理解するための重要な基盤となっています。

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