竹内清己

竹内清己（たけうち きよみ）は、1942年2月5日に北海道室蘭市に生まれた日本の国文学者です。長年にわたり大学で教鞭を執り、東洋大学名誉教授の肩書を持ちます。

竹内の学歴は、千葉大学文理学部を卒業したことに始まります。大学時代には国文学者の森安理文に師事し、日本文学の研究者としての基礎を築きました。卒業後、彼はまず高校教師として教育に携わりましたが、後に大学教員へと転じ、千葉大学教養部で助教授、そして教授を務めました。その後、東洋大学文学部の教授として多くの学生を指導し、研究活動に専念しました。2012年に東洋大学を定年退任しました。

彼の研究の中心は、日本近代文学に置かれています。特に、昭和期の作家である堀辰雄の文学を深く探求し、その研究における第一人者として広く認識されています。堀辰雄作品の構造やテーマを多角的に分析し、その文学史上の位置づけを明らかにしました。堀辰雄以外にも、泉鏡花、川端康成、太宰治といった近代文学の主要な作家たちを研究対象とし、幅広い視野から日本近代文学の特質や流れを考察しました。

竹内は、その優れた研究成果を数多くの著作として発表しています。単著としては、初期の代表作である『堀辰雄の文学』（桜楓社、1984年）、それに続く『堀辰雄と昭和文学』（三弥井書店、1992年）など、堀辰雄研究の重要な著作があります。また、『日本近代文学伝統論 民俗/芸能/無頼』（おうふう、2003年）は、彼の博士論文を基にしたものであり、この研究で東洋大学より文学博士の学位を取得しました。この著作では、近代文学における民俗・芸能といった要素の伝統的な意味合いを深く掘り下げています。その他の単著には、『文学空間 風土と文化』（桜楓社）、『センスの場所 近代詩散歩』（みとす社出版部）、『文学構造 作品のコスモロジー』（おうふう）、『村上春樹・横光利一・中野重治と堀辰雄 現代日本文学の水脈』（鼎書房）などがあり、研究対象や関心の幅広さを示しています。

研究活動は単著だけにとどまらず、編集や共編著にも精力的に取り組みました。作家の自伝シリーズでは、井上靖や堀辰雄の巻の編集を担当し、基礎資料の整備に貢献しました。特に、堀辰雄研究における集大成の一つとして、『堀辰雄事典』（勉誠出版、2001年）の編集に携わったことは、この分野の研究推進に大きな影響を与えました。また、『堀辰雄『風立ちぬ』作品論集』（クレス出版、2003年）の編集なども行い、特定の作品に関する詳細な研究をまとめる作業にも尽力しました。

さらに、複数の研究者との共同による共著・共編著も多数あります。『昭和の短篇小説』（菁柿堂）、『概説 日本文学文化』（おうふう）といった概説的な著作から、『いのちの文箱 名作にみる看・護・療』（菁柿堂、竹内恵子と共編）のように特定のテーマに焦点を当てたもの、さらに『円地文子事典』（鼎書房）のような作家事典の編纂にも参加しており、多様な研究活動を行いました。

学会活動においても重要な役割を果たし、芸術至上主義文芸学会の会長を務めるなど、学会の運営や研究者の交流促進に貢献しました。

竹内清己は、卓越した研究力と広範な知識をもって、日本の近代文学研究、特に堀辰雄研究を牽引し、教育者としても多くの後進を育てました。彼の著作や編集活動は、日本文学研究史に確固たる足跡を残しています。

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