竹紋

竹紋（たけもん）

竹紋とは、イネ科タケ亜科の植物である竹や笹をモチーフにした家紋のことです。大きく「竹紋」「笹紋」「竹に雀紋」に分類されます。日本家紋研究会の調査によると、「丸に九枚笹」が最も多く使用されているようです。

当記事では、「竹紋」と「笹紋」を区別せず、「竹紋」として解説します。

図案

紋章としての竹紋の初出は、『大要抄』に「篠丸」という車紋として登場したものです。図案としては、葉を主体とした「笹」、幹を主体とした「竹」、タケノコを図案化した「筍」などがあります。また、雀、笠、雪などを添えた図案も存在します。笹の葉の形状がリンドウを図案化した龍胆紋の葉に似ているため、龍胆紋と混同されることもあります。

竹紋

竹紋には、数本の竹を並列に並べたものや、竹を円形に描いた「竹輪」などがあります。竹の切り口（主に上部）をギザギザや谷形に描いたものを「切り竹」といい、切り竹を2本円形線対称に配置したものを「抱き竹」といいます。竹に笹の葉を添えたものは「竹笹」と呼ばれます。

笹紋

笹紋は主に葉を描いたもので、1枚から25枚までの葉を並べたものがあります。円形に並べたものと線対称に並べたものがあり、線対称に並べた笹の上に幹を描いたものを「篠笹」、篠笹の下に幹を描いたものを「根笹」、瓜のような楕円形の太い葉を描いたものを「熊笹」といいます。

竹に雀

竹や笹に雀を添えたものを「竹に雀」といいます。竹に雀の文様は、鎌倉時代前期の『大要抄』に「篠丸」と同様に車文として登場します。六波羅探題が使用した紋でしたが、平家滅亡後に勧修寺経房が紋に採用したと『車文抄』に記されています。武家や公家の「竹に雀」は勧修寺笹をルーツとするものが多いですが、鳥居氏の「鳥居笹」は名字の「鳥居」を象ったオリジナルの家紋です。柳生氏の定紋も「柳生笹」と呼ばれ、竹に雀の一種とされますが、『寛政重修諸家譜』には「地楡に雀」と記載されています。図案は、抱き地楡に対い雀を描いたものです。

勧修寺流

勧修寺笹は、藤原北家勧修寺流の一族が使用する紋です。竹輪の中に九枚の笹と三羽の飛び雀を描いたもので、元々使用していた雀紋に竹紋を加えたことで生まれました。勧修寺流の宗家である甘露寺家や、その分家である勧修寺家、坊城家などが使用しています。

上杉氏

藤原北家良門流（勧修寺流）の勧修寺重房を祖とする上杉家も、同様に竹に雀紋を使用します。『見聞諸家紋』には、竹輪の中に五枚笹を5つ並べ、中央に対い雀を描いた図案が掲載されています。江戸時代には、丸に九枚笹の上中央に対い雀を描いた上杉笹の図案が用いられました。会津などを領していた上杉氏は、江戸時代初期に出羽国米沢へ移封されました。この時使用されていた竹に雀の紋は、丸の内に九枚笹を上部に描き、下部に対い雀を描いたもので、特に米沢笹と呼ばれます。上杉氏の竹に雀は、家臣や関係者へ下賜されたことで広まりました。関東管領であった上杉憲実が、管領職を辞した後に西国を巡った際、周防国の大内義興に手厚くもてなされたことから「竹に雀」を贈ったという逸話があります。これに由来し、江戸時代に大名となった周防大内家の分家である牛久山口氏は、丸に露付きの九枚笹に二羽の飛び雀を描いた山口笹を使用しています。また、伊達氏の仙台笹も、上杉氏との関係から生まれた家紋です。

伊達氏

仙台伊達家など伊達氏が使用する竹に雀紋は、元々上杉定実が伊達家から養子を迎える際に、伊達実元へ贈った上杉笹から派生したものです。上杉笹をアレンジした紋は実元の子である伊達成実（伊達政宗の重臣）の家系（実元流伊達氏）が独占して使用していましたが、後に伊達宗家への使用も一部色の変更（雀を柿色にする）という条件付きで認められました。成実の頃の竹に雀紋は、抱き竹笹に対い雀という宇和島笹に近い図案でした。宗家の竹に雀は、江戸時代には笹の葉を外側に描いた竹輪笹の中央に対い雀を描く図案の仙台笹になりました。現在は「竹に雀」、図案を「仙台笹」とその類似図形に指定して伊達家伯記念會株式会社（伊達家）が商標を登録、管理しています。
伊達政宗の庶長子である伊達秀宗を祖とする伊予国宇和島伊達家も竹に雀を使用しますが、こちらは宇和島笹と称します。竹輪ではなく抱き竹に笹の葉を描き、中央に同様の二羽の雀を描きます。秀宗の五男である伊達宗純を初代とする吉田伊達家（伊予吉田藩）は、竹輪に九枚笹に二羽の雀を描いた吉田笹と称する上杉笹や山口笹に近い図案の竹に雀を使用します。
最上義守（義光の父）の娘である義姫が伊達輝宗（政宗の父）に嫁いだ際にも、伊達家の竹に雀の紋が贈られています。最上氏の竹に雀は、上杉氏の米沢笹に類似する図案です。

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