勧修寺流

勧修寺流：朝廷と深く関わり、歴史に名を刻んだ名門一族

勧修寺流は、藤原北家高藤流から派生した由緒ある公家の一流です。その歴史は、藤原定方という人物に始まります。定方は高藤の子として生まれ、山科に勧修寺を建立したことから、この一族は「勧修寺流」と呼ばれるようになりました。今日では「かじゅうじりゅう」と読むのが一般的ですが、歴史文献によっては「くわんしゆし」といった読み方も見られます。

勧修寺流は、単なる血縁関係を超えた、強い結束で知られていました。山科の勧修寺は、一族の精神的な拠り所として重要な役割を果たしました。朝廷での実務に携わる家が数多く、弁官や摂関家家司などを輩出するなど、政治の中枢に深く関わってきました。

その特徴として特筆すべきは、詳細な日記を数多く残していることです。後世への教訓として、また実務の参考として、先例を記録しておく必要性が高かったためです。このことから、勧修寺流は「日記の家」とも称され、各家当主の日記は貴重な歴史資料として現代に伝えられています。

勧修寺流の祖である定方の子孫からは、多くの家系が分かれていきました。甘露寺家、清閑寺家、万里小路家、中御門家、勧修寺家、坊城家、穂波家、葉室家、池尻家、梅小路家、岡崎家、芝山家、堤家など、数多くの堂上家が勧修寺流を構成しています。中でも甘露寺家は、定方の孫である為輔を祖とする家系で、勧修寺流の嫡流とされています。しかし、甘露寺家と勧修寺家の明確な分離は、為輔から数えて9代後の資経の代まで待たなければなりませんでした。

勧修寺流は政治の世界だけでなく、文化面にも大きな影響を与えました。紫式部の夫として知られる藤原宣孝も勧修寺流の一員であり、その曾孫にあたる為房は白河法皇の近臣として活躍しました。また、為房の曾孫である経房は「吉田」という家名を名乗り、源頼朝と深い関係を築き、朝廷と鎌倉幕府の連絡役として重要な役割を果たしました。

さらに、勧修寺流は武家の世界にも進出しました。上杉氏は、勧修寺流の一族として知られています。庶流であった藤原重房は、宗尊親王に仕えて鎌倉に下り、足利氏と縁戚関係を結ぶことで、関東管領の地位を世襲するなど、大きな勢力を築きました。また、井伊氏や肥後氏（種子島氏）なども、勧修寺家の後裔を称しています。

勧修寺流の系図は複雑で、実子、養子関係が入り組んでいます。藤原為時の越前守就任時の逸話は、その学才の高さを示すものとして『今昔物語集』などに伝えられています。為時の娘である紫式部は、言うまでもなく『源氏物語』の作者として有名です。紫式部の兄弟である藤原惟規の子孫には、藤原邦綱といった公卿も輩出しています。

明治時代には、華族の宗族制において、勧修寺流は第49類内大臣鎌足七代内舎人良門裔として分類されました。このように、勧修寺流は、政治、文化、武家の世界に多大な影響を与えた、歴史上重要な一族であったと言えるでしょう。その栄光と繁栄の歴史は、今日まで伝えられる数多くの歴史資料、特に詳細な日記によって裏付けられています。

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