大内義興

大内義興：西国の雄、その生涯と業績

大内義興（おおうち よしおき）は、室町時代後期から戦国時代にかけての周防国（現在の山口県）を拠点とした戦国大名であり、公卿でもありました。周防の有力豪族である大内氏の第15代当主として、室町幕府の管領代を務め、将軍の後見人となるなど、その勢力は西日本一帯に及んだ人物です。

生涯

家督相続と内訌

文明9年（1477年）、大内氏第14代当主・大内政弘の子として京都で生まれました。幼名は亀童丸。長享2年（1488年）に元服し、将軍・足利義尚から「義」の字を授かり「義興」と名乗ります。

明応元年（1492年）には、父の命で六角高頼討伐に参加しますが、その最中に明応の政変が勃発。義興は事態の推移を見守るにとどまります。この政変に関連して、義興の妹が誘拐される事件や、父・政弘が義興の側近に切腹を命じる事件が発生するなど、家中は混乱しました。

明応3年（1494年）に父が隠居したため、家督を継承し大内氏の当主となります。しかし、家督継承の前後から、陶氏や内藤氏といった重臣が没落するなど、家中では不穏な動きが相次ぎました。弟・大護院尊光の擁立計画も持ち上がりましたが、義興はこれを鎮圧し、尊光は大友氏を頼って豊後へ亡命しています。

九州進出と前将軍亡命

大内氏は長年、北九州において大友氏や少弐氏と勢力争いを繰り広げていました。大友氏との関係が安定したのも束の間、大友政親が長門国に漂着し、義興によって処刑されるという事件が起こります。その後、義興は大友氏の後継者争いに介入しますが、失敗に終わりました。

一方、筑前国の奪回を狙う少弐氏との戦いでは、義興は筑前に出陣し、少弐氏を破って肥前へと侵攻します。九州探題・渋川尹繁を支援するなど、肥前国における勢力拡大に成功しました。

明応8年（1500年）には、亡命中の前将軍・足利義尹（後の義稙）が義興を頼って山口に下向。義尹は山口に幕府を開き、義興は義尹を擁して上洛を目指すことになります。これに対し、足利義高（義澄）や細川政元らは大友氏らに義興討伐を命じ、義興は「朝敵」として扱われることになりました。

天下人へ

永正元年（1504年）頃から上洛の構想を抱いていた義興は、永正4年（1507年）に細川政元が暗殺されたことを好機と捉え、足利義尹を奉じて上洛を開始します。細川氏の内紛に乗じて勢力を拡大し、永正5年（1508年）には義尹を奉じて入京を果たしました。

義興は義尹を将軍職に復帰させ、自らは管領代として幕政を主導します。その功績により、従三位に叙せられ公卿に列しました。また、娘を足利義維（義澄の次男）に嫁がせ、将軍家との関係を強化しました。

しかし、次第に将軍・足利義稙や細川高国との関係が悪化し、さらに領国で尼子経久が勢力を拡大。義興は永正15年（1518年）に管領代を辞して帰国しました。

尼子氏との戦い

帰国後、義興は尼子氏との戦いに力を注ぎます。安芸国の武田元繁や友田興藤らが尼子氏と通じたため、尼子氏の大内領への侵攻が本格化しました。義興は安芸・石見に出兵し、連年のように尼子氏と戦いますが、戦況は芳しくありませんでした。毛利元就が一時尼子方に寝返るなど、苦戦を強いられますが、後に毛利元就が再び帰参し、安芸における勢力を回復しました。

享禄元年（1528年）7月、安芸門山城攻めの陣中で病に倒れ、同年12月20日に死去。享年52。跡を嫡男の義隆が継ぎました。

人物・逸話

義興は文人としての側面も持ち合わせており、和歌や連歌を嗜みました。特に和歌は後柏原天皇をはじめとする多くの公卿から賞賛され、連歌では宗祇の弟子・宗碩から古今の伝授を受けています。

伊勢神宮の勧請

永正11年（1514年）に伊勢神宮に参拝した際、感銘を受け、永正15年（1518年）に山口へ戻ると、皇太神宮、豊受大神宮の勧請を試みました。勅許を得て高嶺太神宮（現在の山口大神宮）を創建し、伊勢神宮の分霊を祀りました。

大内義興は、戦国時代の激動期において、西日本に一大勢力を築き上げた人物です。武将としての才能はもちろん、文化人としての側面も持ち合わせており、その多才な魅力が人々を惹きつけたと言えるでしょう。

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