竹 (松型駆逐艦)

駆逐艦『竹』：雑木林艦隊の生き証人

概要

『竹』は、第二次世界大戦中、大日本帝国海軍が横須賀海軍工廠で建造した駆逐艦です。戦時量産型として建造された松型駆逐艦（丁型駆逐艦）の2番艦であり、同名の駆逐艦としては2代目にあたります。松型駆逐艦は、戦時急造艦であるため「雑木林」という渾名で呼ばれ、速力や火力といった性能は限定的でしたが、従来の日本海軍駆逐艦と比較して、被弾による損傷への耐性（生存性）は大幅に向上していました。

1944年6月16日に竣工した『竹』は、まず訓練部隊である第十一水雷戦隊に所属し、訓練や南西諸島への兵站輸送任務に従事しました。その後、7月15日には新たに編成された第43駆逐隊に所属し、8月からは台湾、マニラ、パラオ諸島周辺で輸送任務や船団護衛任務に従事しました。8月20日には第三十一戦隊に編入され、同月中旬には軽巡洋艦『名取』や駆逐艦『五月雨』の救難にも携わっています。

10月下旬からは、レイテ島への増援輸送作戦（多号作戦）に参加。第三次、第四次、第五次、そして第七次作戦に渡り参戦しました。『竹』は、作戦中に幾度となく損傷を受けながらも、奇跡的に生還を果たしました。特に12月3日、オルモック湾で発生した夜戦では、姉妹艦『桑』と共に米軍大型駆逐艦3隻と交戦し、『竹』は魚雷攻撃によって駆逐艦『クーパー』を撃沈するという戦果を挙げました。これは日本海軍駆逐艦による雷撃での敵艦撃沈の最後の事例となりました。

その後、『竹』は本土に帰還し、終戦まで瀬戸内海で残存。戦後は復員輸送艦として任務に就きました。

戦歴

レイテ島の戦いまで

『竹』は、仮称艦名第5482号艦として1943年10月15日に横須賀海軍工廠で起工、1944年1月25日に正式に『竹』と命名され、一等駆逐艦に類別されました。3月28日には進水、本籍を横須賀鎮守府に定めました。4月15日には田中弘國少佐が艤装員長に任命され、4月20日には横須賀海軍工廠に艤装員事務所が設置されました。艤装員には、戦艦『山城』分隊長であった可兒祥男大尉や、駆逐艦『天霧』沈没後に横須賀鎮守府付となった志賀博大尉などが着任しました。

6月16日に竣工し、田中少佐が初代艦長に就任。『竹』は、第十一水雷戦隊に編入され、7月には瀬戸内海で訓練を実施。その後、南大東島への輸送作戦に参加し、7月15日には、秋月型駆逐艦2隻と松型駆逐艦4隻によってそれぞれ第41駆逐隊と第43駆逐隊が編成され、『竹』は第43駆逐隊に所属しました。7月8日に発令された「呂号作戦」では、南西諸島方面への陸軍兵力の輸送任務に従事しました。

8月以降は、パラオ方面への緊急輸送任務や船団護衛に従事。軽巡洋艦『名取』や駆逐艦『五月雨』の救難活動にも参加しました。8月20日には、第三十一戦隊に編入されています。10月には、ミンダナオ海峡やミンドロ海峡で船団護衛中に米軍潜水艦の雷撃を受け、護衛していた輸送船を失う事態も経験しました。

多号作戦

10月下旬に開始されたレイテ島への増援輸送作戦（多号作戦）では、第三次、第五次、そして第七次作戦に参加。田中艦長は病気のため入院し、飯村忠彦少佐が臨時艦長に、後に宇那木勁少佐が艦長に就任しました。多号作戦は、空襲や敵艦との戦闘、そして潜水艦の攻撃など、非常に危険な状況の中での輸送作戦でした。特に第五次作戦では、空襲を受け、多くの損害を被りながらも、オルモック湾への突入を断念し、マニラへ帰投しました。

第七次多号作戦と「クーパー」撃沈

第七次多号作戦では、『竹』は『桑』の指揮下に入り、12月3日、オルモック湾で米軍駆逐艦3隻と夜戦を展開しました。この戦闘で『竹』は、魚雷攻撃によって米駆逐艦『クーパー』を撃沈する戦果を挙げました。しかし、『竹』自身も被弾し、機関に損傷を受けました。

終戦まで

オルモック湾夜戦の後、『竹』は修理のため佐世保に向かう途中、台風にも遭遇しました。終戦まで生き延びた『竹』は、戦後は復員輸送艦として活躍しましたが、1947年にイギリスに賠償艦として引き渡され、解体されました。

歴代艦長

艤装員長：田中弘國 少佐 (1944年4月15日 - 1944年6月16日)
艦長：田中弘國 少佐 (1944年6月16日 - 1944年11月1日)
臨時艦長：飯村忠彦 少佐 (1944年11月3日 - 1944年11月14日)
艦長：宇那木勁 少佐 (1944年11月14日 - 1945年12月20日以降)

参考文献

（ここに、本文中で引用した参考文献のリストを記載します。）

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