笑福亭仁勇

笑福亭 仁勇

笑福亭 仁勇（しょうふくてい にゆう、本名：山澤 健二）氏は、1958年9月4日に大阪市に生まれた落語家です。上方落語界の重鎮、三代目笑福亭仁鶴師匠に師事し、その門下から多くの後進を育てるとともに、自身も多岐にわたる活動を展開しました。所属事務所は吉本興業系列のよしもとクリエイティブ・エージェンシーで、上方落語協会にも会員として名を連ねていました。

芸歴と活動の広がり

1977年4月1日、大阪府立桜塚高等学校の卒業式に出席したその日に、三代目笑福亭仁鶴師匠に入門。翌1978年には、大阪のうめだ花月にて念願の初舞台を踏みました。落語家としての研鑽を積む一方で、その活動は高座だけに留まりませんでした。

同門の笑福亭仁智、笑福亭仁福、そしてマジシャンの松旭斎小天正と共にコントグループ「大阪パイレーツ」を結成し、舞台やテレビで活躍。落語で培った話術とユーモアセンスをコントでもいかしました。また、落語家たちが集まる阿波踊り連「はなしか連」にも参加し、“中間管理職”というユニークな役職で連を支えました。

上方落語協会の活動にも積極的に関与。特に、上方落語の夏の風物詩である「彦八まつり」では、第一回開催時から実行委員として運営に深く携わり、その成功に貢献しました。さらに、協会が発行する広報誌には「んなあほな」という印象的な名前を命名。協会の顔となる媒体に彼のセンスが光りました。

落語界の枠を超えた活動としては、2015年の【大阪W選】において、候補者（柳本顕氏、栗原貴子氏）の合同演説会の司会を務め、聴衆を惹きつける巧みな進行で多くの人々を魅了しました。

人物像とエピソード

高座名「仁勇」は、英語の「NEW」に由来するとされており、常に新しいものを取り入れようとする彼の姿勢が反映されているかのようです。

私生活では、お囃子方として活躍されていた山澤由江氏と1994年に結婚。しかし、残念ながら由江夫人は心身症などの病を患い、2010年2月に50歳で先立たれるという悲劇に見舞われました。

母校である桜塚高校の卒業式では、答辞という大役を務めましたが、実はこの時点ではまだ単位不足のため正式な卒業はできていませんでした。同期の門出を祝う「送辞」の要素も含む異例の答辞となり、正式に高校を卒業したのはそれから18年後というユニークなエピソードがあります。

教育にも関心を持ち、複数の大阪府立高校で「芸能鑑賞講座」などの非常勤講師を務め、若い世代に芸能文化の魅力を伝える活動も行っていました。また、放送大学の学生として生涯学習を実践するなど、学ぶことへの意欲を生涯持ち続けました。趣味としては草野球チーム「モッチャリーズ」の一員として汗を流す一面もありました。

突然の旅立ち

精力的に活動を続けていた仁勇氏を突然の悲劇が襲います。2017年12月11日、体調の異変を感じた仁勇氏自らが119番通報し、病院へ搬送されました。しかし、病院へ到着する前にすでに呂律が回らない状態となり、その夜には人工呼吸器による処置が施されるほど容態は深刻化しました。翌12日には、医師団から「手の施しようがない」との宣告を受けます。その後、意識が回復することなく、2017年12月16日14時3分、脳幹出血のため永眠しました。享年59歳という、あまりにも早すぎる旅立ちでした。

この訃報に接し、上方落語協会は「最近まで舞台に出ていたが、数日前に急に倒れられたようだ」と、その急逝を惜しみました。また、兄弟子であり一門の惣領弟子にあたる笑福亭仁智師匠が、師匠である三代目笑福亭仁鶴師匠に仁勇氏の訃報を伝えたところ、仁鶴師匠は愛弟子の突然の死に大変なショックを受けている様子がうかがえたとのことです。

落語家として、また多方面での活動を通じて、多くの人々に笑顔と活力を与えた笑福亭仁勇氏。その功績は上方落語界、そして関係者の心に深く刻まれています。

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