第一木曽川橋梁

JR中央本線が岐阜県中津川市を通過する際に、木曽川という大きな河川を跨ぐ重要な鉄道橋が「第一木曽川橋梁」（だいいちきそがわきょうりょう）です。この橋梁は、中央本線上の坂下駅と落合川駅の間に位置しており、上り列車と下り列車のためにそれぞれ独立した橋が架けられている、いわゆる複線橋梁として機能しています。単線であった時代を経て現在の複線構造に至るまで、その歴史は地域の交通発展と深く関わっています。

現在の第一木曽川橋梁

現在、列車が使用している第一木曽川橋梁は、上下線それぞれで建設時期が異なります。
上り線用の橋梁は1968年（昭和43年）に、下り線用の橋梁はそれより少し遅れて1972年（昭和47年）に、それぞれ新たに架け替えまたは新設されたものです。
どちらの橋梁も、全長は93.3メートルの一連（一つの連続したスパン）で構成されています。
採用されている構造形式は「下路曲弦ワーレントラス」です。これは、橋の構造体であるトラス部材が、列車が通過する軌道面より上部にあり（下路式）、トラスの上辺を構成する部材（上弦材）がゆるやかな曲線を描いており（曲弦）、部材の配置パターンがワーレン形式であるという特徴を持っています。この形式は、比較的長いスパンの橋梁に適しており、強度と景観への配慮から選ばれることがあります。

沿革と変遷

第一木曽川橋梁の歴史は、中央本線が延伸されてきた明治時代に遡ります。
最初の第一木曽川橋梁が完成したのは1907年（明治40年）のことでした。この時代の橋梁は単線仕様であり、当時著名であったアメリカンブリッジ社によって製造されました。構造形式としては、下路ペチットトラスという、垂直材と斜材を組み合わせた複雑なタイプのトラスが採用されていました。
この初代橋梁は、翌年の1908年（明治41年）8月1日に中央本線の中津駅 - 坂下駅間が開通した際に、正式に供用を開始しました。これは木曽谷地域の住民にとって、鉄道による交通の便が開ける画期的な出来事でした。
時が流れ、日本の経済成長に伴い中央本線の輸送量が増大すると、単線区間がボトルネックとなる箇所が出てきました。坂下駅と落合川駅の間もその一つであり、複線化が計画されました。1968年（昭和43年）9月25日、この区間の複線化が完成しました。これに伴い、従来の単線橋梁のすぐ上流側に、新たに上り線専用の橋梁が建設されました。この時点では、もともと1907年に完成した初代の橋梁が、下り線専用として引き続き使用されることになりました。
しかし、初代の下り線用橋梁は既に建設から60年以上が経過しており、老朽化が進行していました。鉄道輸送の安全性を維持するため、この下り線用橋梁の架け替えが決定されました。そして1972年（昭和47年）4月24日、新しい下り線用の橋梁が完成し、供用を開始しました。これにより、第一木曽川橋梁は上下線ともに、現在の「下路曲弦ワーレントラス」の構造を持つ橋梁に置き換えられました。

現在、この第一木曽川橋梁は、木曽川の清流を跨ぎ、JR中央本線の名古屋方面と長野方面を結ぶ動脈として重要な役割を果たしています。その堅牢な構造は、日々多くの列車を安全に運び続けており、地域の交通インフラとして欠かせない存在となっています。歴史的な変遷を経て現在の姿となったこの橋梁は、技術の進歩と地域の発展を見守り続けています。

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