第一次マラーター戦争

第一次マラーター戦争の概要

第一次マラーター戦争（1775年-1782年）は、イギリス東インド会社とマラーター同盟との間で、主にデカン地方において繰り広げられた軍事衝突を指します。この戦争は、インドの歴史において重要な位置を占めており、その背景には当時のマラーター王国内の権力闘争が絡んでいます。

戦争に至る経緯

1772年11月、マラーター王国の宰相であったマーダヴ・ラーオが死去しました。彼の後を継いだのは、彼の弟ナーラーヤン・ラーオでしたが、1773年8月に暗殺されてしまいます。この一連の事件により、権力の空白が生じ、宰相の座を巡る混乱が続くこととなりました。暫定的に叔父のラグナート・ラーオがその座に就くものの、彼には暗殺に関与した疑惑がかかります。

その後、ナーラーヤン・ラーオの未亡人が息子を出産し、財務大臣のナーナー・ファドナヴィースはその子を新たな宰相に擁立しました。しかしラグナート・ラーオは権力を諦めることなく、プネーを逃れ、イギリス東インド会社に接近しました。この時点で、イギリス側はアメリカ独立戦争の影響で経済的に苦しんでおり、マラーター王国の内紛に介入することが国家利益にかなうと判断しました。

戦争の経過

1775年3月6日、ラグナート・ラーオはイギリスと結んだスーラト条約に基づき、イギリスの軍事支援を得て戦争を開始しますが、その後、マラーター軍に敗北したため、プネーへの進撃は困難となります。1776年、プランダル条約が締結され一時は戦争が終息するかに見えましたが、イギリスのカルカッタ参事会はその条約を認めず、戦争は続行されます。

1779年、イギリス軍はマラーター軍と衝突し、この戦いではイギリス軍が降伏するという結果に至ります。ヴァドガーオン条約では、その後のボンベイ政府の領土が全て返還されることが定められました。しかし、イギリス軍はその後、増援を受けて戦局を有利に進め、1780年には重要な拠点をいくつか奪取しました。

この時期、ナーナー・ファドナヴィースはマイソール王国のハイダル・アリーと同盟を結び、戦線はさらに複雑になります。第一次マラーター戦争の後半では、マラーター軍との小競り合いが続き、イギリス軍は疲弊していきます。

講和と戦争の終結

1782年、状況は変化し、イギリスは第二次マイソール戦争に注力する必要が生じました。このため、ヘースティングズは和平交渉を模索し、最終的にサルバイ条約が締結されました。この条約により、イギリスはマーダヴ・ラーオ・ナーラーヤンを宰相として承認し、戦争中に獲得した土地をマラーターに返還しなければならなくなりました。

この結果、イギリスはマラーター王国との間に20年間の平和を築くことに成功しました。しかし、この平和が続く中、イギリスとマラーターは再び1803年に戦火を交えることになります。第一次マラーター戦争は、その後のインドの歴史においても重要な影響を与える事件の一つといえるでしょう。

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