第七十一号艦

仮称第71号艦

仮称第71号艦（だいななじゅういちごうかん）は、日本海軍において開発された特異な潜水艦で、後に水中高速潜水の基盤となる実験艦としての役割を果たしました。興味深いことに、艦籍として正式に登録されることはなく、最後まで仮称艦名のままで存在しました。

概要

仮称第71号艦の設計は、当初離島防衛のための潜水艦としての可能性を考慮し策定されました。予定されていた水中速力は25ノットであり、同時代の一般的な潜水艦に比べて非常に高い数値でした。この高速の実現に向けて、1934年に建造されたA標的や甲標的の開発経験が活かされ、技術的な裏打ちが行われました。

艦首には浮力タンクが設けられましたが、これにより水上では安定性に欠けるという欠点も併せ持っていました。1937年から呉海軍工廠小雷工場で建造が始まり、1938年8月29日に進水し、様々な実験に取り組んでいきました。主機には当初、航空機用のダイムラー・ベンツ社製ディーゼルエンジンが予定されていましたが、輸入が難航したため、性能が劣る国産の見積もり違いのエンジンが搭載されることになりました。

残念ながら、エンジン出力の低下や減速機に関する問題により、試運転時の水上速度は計画の18ノットを下回る13ノットに、水中速力も25ノットを目指していたものの21.3ノットにとどまりました。それでも、当時の他国の潜水艦と比べてはるかに高いスピードであり、特にイギリスのR級潜水艦の水中速力14ノットを圧倒的に上回るものでした。

この艦は、その後も様々な実験が行われましたが、技術的な課題から実戦配備には至らず、1941年夏には解体される運命をたどりました。第71号艦に関する資料は非常に限られており、甲標的同様に軍事機密にあたると思われる情報も多いです。

進化する技術

第71号艦は、多くの技術的課題を抱えつつも、当時の潜水艦についての新しい可能性を広げる重要な経験となりました。この艦の設計思想は、後の伊二百一型および波二百一型潜水艦の開発にも影響を与え、水中で高速航走が可能な潜水艦のモデルケースとなりました。

特に、A標的や甲標的で培った知識を基に、艦体や艦橋のデザインには水中での抵抗を最小限に抑えるための流線型設計が取り入れられています。艦体は単殻構造で、艦首には浮力タンクが配置され、3門の魚雷発射管は艦首の中心線下部と、浮力タンクの上部にも設置されました。しかし、いずれの発射管も艦内からの再装填には対応していなかったため、帰港後に補充される必要がありました。

また、艦には大容量の特B型蓄電池672個が搭載され、1800馬力を発揮する電動機と80馬力の補助電動機も開発される予定でしたが、主機は結局国産のディーゼルエンジンを用いることになりました。操縦系統は、魚雷深度器と横舵機による自動操縦システムを備えており、万が一の場合には人力で操作できる舵輪も用意されていました。艦尾には潜舵がない独特な設計の操舵装置が配置され、水中での運動性が向上しています。

まとめ

仮称第71号艦は、高速航走の領域での日本海軍の先進的な意欲を示す重要な実験艦であり、その後の潜水艦設計に大きな影響を及ぼしました。技術革新の試みは決して容易なものではありませんでしたが、これを通じて日本は潜水艦の新たな可能性を探る貴重な教訓を得たのです。

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