第三議会

第三議会（第三回護国卿議会）：短命に終わったリチャード・クロムウェルの議会

1659年、イングランド共和国において短期間開催された第三議会（または第三回護国卿議会）は、清教徒革命期の激動を象徴する出来事でした。護国卿オリバー・クロムウェルの死後、後を継いだ息子のリチャード・クロムウェルによって召集されたこの議会は、わずか3ヶ月足らずで幕を閉じ、イングランドの政治状況をさらに混沌に陥れることになります。

リチャード・クロムウェルの苦境と議会の召集

オリバー・クロムウェルの死（1658年）後、跡を継いだリチャード・クロムウェルは、父ほどのカリスマ性や影響力を持っていませんでした。特に、ニューモデル軍からの支持は得られず、議会を召集することで文民からの支持を確保しようと試みました。1659年1月27日、第三議会が開会しました。しかし、議会は共和主義勢力の強い批判にさらされます。リチャード・クロムウェルを支持する勢力は議会の約3分の1に過ぎず、議会は彼に忠実とは言い難い状況でした。リチャードは、この議会の反軍感情を利用して軍の政治介入に対抗しようと試みました。

軍部の反発と議会の解散

しかし、リチャードの計画は失敗に終わります。軍部は、リチャードの義兄であるチャールズ・フリートウッドを司令官に擁立し、議会の共和主義勢力と手を組みました。ロンドンに軍を集結させ、リチャードを威圧して議会の解散を要求したのです。リチャードは一旦は抵抗を試みましたが、軍の圧倒的な力の前には為す術もなく、1659年4月22日、第三議会は解散されました。

混乱続くイングランド共和国

議会の解散後もイングランドの政治情勢は不安定なままでした。5月7日、軍はかつてオリバー・クロムウェルによって解散されたランプ議会を復活させます。リチャード・クロムウェル自身も、そのわずか18日後の5月25日に護国卿の地位を辞任しました。護国卿時代は終焉を迎えましたが、その後も軍と議会は対立を続けました。ジョン・ランバートとフリートウッドは軍事政権を樹立しようとしますが、ジョージ・マンクによって崩壊させられます。イングランドでは政権が次々と入れ替わる混乱が続き、最終的な決着は、マンクがチャールズ2世を迎え入れ、王政復古が成立した1660年まで持ち越されました。

第三議会の意義

第三議会は、わずか3ヶ月という短い期間しか存在しませんでしたが、清教徒革命期のイングランドにおいて、権力闘争の激しさ、そして政治的不安定さを如実に示す出来事でした。リチャード・クロムウェルの無力さ、軍部の強大な力、そして共和主義勢力の台頭といった要素が絡み合い、イングランドの運命を大きく左右することになります。この議会の失敗は、護国卿体制の終焉を早め、王政復古への道を切り開く重要な転換点となったと言えるでしょう。 リチャード・クロムウェルの政治的判断ミス、軍部の圧力、そして議会内部の対立といった要素が複雑に絡み合った結果、わずか数ヶ月で幕を閉じた第三議会は、イングランド共和国の不安定さを象徴する出来事として歴史に刻まれました。

参考文献

今井宏『クロムウェルとピューリタン革命』清水書院、1984年
松村赳・富田虎男編『英米史辞典』研究社、2000年
* 清水雅夫『王冠のないイギリス王 オリバー・クロムウェル―ピューリタン革命史』リーベル出版、2007年

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