第二作法

第二作法（Seconda pratica）とは

第二作法は、16世紀末から17世紀初頭にかけての音楽における革新的な動きを指す言葉です。特に、クラウディオ・モンテヴェルディとジョヴァンニ・マリア・アルトゥージの論争を通じてその概念が明確化されました。伝統的な音楽理論、特にジョヴァンニ・ダ・パレストリーナやジョゼッフォ・ツァルリーノに代表される第一作法（Prima pratica）からの脱却を目指し、より自由な表現を追求する音楽様式として提唱されました。

第一作法との対比

第一作法は、厳格な対位法を重んじ、不協和音の使用を厳しく制限するものでした。これはルネサンス音楽の規範とも言えるもので、教会音楽を中心に発展しました。一方、第二作法は、音楽が歌詞の内容や感情をより直接的に表現することを重視しました。そのため、不協和音をより自由に用いたり、声部の動きをより大胆にしたりするなどの特徴が見られます。

現代様式（stile moderno）

第二作法は、「現代様式（stile moderno）」とも呼ばれます。この様式は、従来の音楽の規則に縛られず、より感情豊かで劇的な表現を可能にしました。特に、歌詞の内容を強調するために、音楽がその感情を反映するように作曲されることが重視されました。

代表的な作曲家：ジュリオ・カッチーニ

ジュリオ・カッチーニは、第二作法の代表的な作曲家の一人です。彼は、歌曲集『新しい音楽（Le nuove musiche）』において、独唱または重唱に器楽伴奏を伴うモノディという様式を用いました。モノディは、単旋律に単純な伴奏をつけたもので、歌詞の明瞭な伝達と感情表現を重視する第二作法の理念を体現しています。カッチーニは、装飾音を多用することで、歌唱に豊かな表情を与え、聴衆の感情を揺さぶることを目指しました。

通奏低音の萌芽

カッチーニの作品には、通奏低音の初期の形も見られます。通奏低音は、低音の旋律線とその上に和音を指示する数字を記したもので、演奏者はこの指示に従って即興的に和音を付け加えます。これにより、音楽に即興性と自由度がもたらされ、第二作法の音楽表現の幅を広げることに貢献しました。

第二作法の意義

第二作法は、音楽史において重要な転換点となりました。それは、音楽が単なる技術的な規則の遵守から、より自由な感情表現の手段へと進化する過程を示しています。モンテヴェルディやカッチーニらの革新的な試みは、その後のバロック音楽の発展に大きな影響を与え、オペラやカンタータといった新しい音楽ジャンルの誕生を促しました。

参考文献

Selfridge-Field, Eleanor (1990). "'Two Practices, Three Styles’: Reflections on Sacred Music and the Seconda Prattica" in The Well-Enchanting Skill: Music, Poetry, and Drama in the Culture of the Renaissance: Essays in Honour of F. W. Sternfeld), ed. John Caldwell, Edward Olleson, Susan Wollenberg. Introduction by Sir Michael Tippett". Oxford: Clarendon Press. pp. 53–64.
Hanning, Barbara Russano (1998). Concise History of Western Music (1st edition ed.). New York: W.W. Norton. ISBN 0-393-97168-6.

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