第二次シク戦争

第二次シク戦争：インド植民地化の最終段階

第二次シク戦争（1848年～1849年）は、イギリス東インド会社とシク王国の間で勃発した戦争であり、イギリスによるインド支配の重要な転換点となりました。この戦争の結果、シク王国は滅亡し、インドはイギリスの植民地として完全にその支配下に入ったのです。

戦争への道：ラホール条約と高まる緊張

1846年の第一次シク戦争終結後、締結されたラホール条約は、シク王国に大きな負担を強いました。イギリスの駐在官がラホールに配置され、王国はジャンムー・カシミールやジャーランダル・ドアーブなどの広大な領土を割譲せざるを得ませんでした。さらに、軍隊の規模も大幅に縮小されました。続く新たな条約では、イギリス駐在官の権限はさらに強化され、王国各地への駐屯地の設置も認められました。

これらの条約は、シク王国の主権を著しく制限するものでした。イギリスによる干渉と支配は、シク王国の人々に強い不満を生み出し、反英感情を高めていきました。一方で、イギリス側の一部強硬派は、シク王国を併合し、パンジャーブ地方を直接統治すべきだと主張するようになりました。この対立が、やがて戦争へと発展するのです。

戦火の拡大：主要な戦闘とシク王国の敗北

1848年5月、反英感情が爆発し、シク王国各地で反乱が発生、第二次シク戦争が始まりました。ムール・ラージ・ムルターンワーラーやチャタル・シング・アッターリーワーラーといった指導者たちが、反乱軍を率いてイギリス軍と戦いました。

戦争は、ムルターン包囲戦（1848年4月～）から始まり、ラームナガルの戦い（1848年11月）、チリヤーンワーラーの戦い（1849年1月）といった主要な戦闘が繰り広げられました。これらの戦闘では、シク王国軍はイギリス軍に幾度か勝利を収めるものの、決定的な打撃を与えるには至りませんでした。

1849年1月、ムルターンが陥落。その後、グジュラートの戦い（1849年2月）でシク王国軍はイギリス軍に大敗を喫し、戦争の趨勢は決定づけられました。2000名を超える死傷者を出したこの敗戦により、シク王国は同年3月、イギリスに降伏せざるを得ませんでした。

戦後の処理：パンジャーブ併合とシク王朝の終焉

戦争後、インド総督ダルハウジー侯爵は、パンジャーブの安定を確保するためには、間接統治ではなく、イギリスによる直接統治が不可欠だと判断しました。これにより、シク王国の領土はイギリス領インド帝国に併合され、インド植民地化が完了したのです。

シク王国の最後のマハラジャ、ドゥリープ・シングは、年金を受け取りイギリスへ移送されました。彼の財産、そしてランジット・シングが所有していたコーヒ・ヌールのダイヤモンドも没収され、イギリス女王ヴィクトリアに献上されました。このダイヤモンドは現在もイギリス王室の宝冠を飾る象徴的な宝石となっています。

第二次シク戦争は、イギリスによるインド支配の完全な確立を意味しました。しかし、この支配は、インドの人々の反英感情を完全に消し去ることはできませんでした。このことが、後のインド大反乱（1857年）へとつながっていくのです。

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