第十三号型掃海艇

日本海軍が運用した第十三号型掃海艇は、昭和6年度の艦艇建造計画に基づき、掃海任務を担うために設計された一連の小型艦艇です。当初は6隻の建造が計画されましたが、実際にこの型として完成したのは4隻でした。海軍省の公式な分類では6隻をこの型に含める場合もありますが、設計の変遷から狭義には4隻として扱われます。

この艇型は、先行する第五号型掃海艇の設計を踏まえつつ改良が加えられましたが、当時の日本海軍艦艇に共通する設計思想、すなわち比較的幅広く吃水が浅い船体に、求められる任務性能を実現するため過大な兵装を搭載するという傾向が顕著でした。その結果、第十三号型は復元性能、つまり船体の安定性に重大な問題を抱えることとなりました。その不安定さは、例えば第13号において、乗員が上甲板に集合しただけで船体が大きく傾き、任務遂行に支障をきたすほどであったと伝えられています。

このような問題が明らかになったのは、まず第13号と第14号が竣工した後のことでした。特に昭和9年に発生した友鶴事件という海難事故は、日本海軍全体に艦艇の復元性能に対する深刻な懸念を抱かせ、設計の見直しと既存艦艇の改修を促す契機となりました。第十三号型もその影響を受け、すでに完成していた第13号と第14号は、昭和9年7月にかけて呉海軍工廠で大規模な復元性能改善工事が実施されました。この改修では、船体の重心を下げるため、艦橋の構造を1段低くしたり、煙突やマストの高さを抑えたりする措置が取られました。さらに、船底にバラストキールを追加することで安定性を高めました。これらの改造により安定性は向上したものの、船体抵抗が増加したため、速力は当初の計画よりも低下し、最大でも19ノット程度になったと言われています。

一方、建造中であった第15号と第16号は、この改修の内容を設計段階から取り入れて建造が進められ、昭和9年に竣工しました。また、当初計画されていたうち、まだ起工されていなかった残りの2隻については、設計そのものが全面的に見直され、復元性能の問題が改善された全く別の型、すなわち第十七号型掃海艇として完成しています。

完成した4隻の第十三号型掃海艇は、その後、太平洋戦争の勃発と共に実戦に投入されました。しかし、その戦歴は厳しいものでした。緒戦の南方作戦において、第13号と第14号は、昭和17年1月12日、攻略目標であったタラカン沖で、敵の陸上砲台からの正確な砲撃を受けて相次いで沈没し、早期に失われました。第16号も、昭和18年9月11日、マカッサル沖で敵航空機による攻撃を受け、戦没しました。

4隻の中で最も長く戦場にあったのは第15号でした。第15号は、戦局が厳しさを増す大戦後半において、対空・対潜能力の強化が図られました。昭和19年9月時点の記録によれば、艦の前部に装備されていた12cm単装砲1門を撤去し、代わりに25mm連装機銃1基を装備。加えて、25mm単装機銃を5挺増設するなど、主に対空火力が大幅に強化されました。また、潜水艦対策として、九四式爆雷投射機1基、八一式爆雷投射機2基、そして潜水艦を探知するための九三式水中聴音機1基（水中聴音機には雑音低減のため水流覆が装備）が搭載され、対潜兵装も強化されています。しかし、対潜掃討任務などに従事していた第15号も、終戦間際の昭和20年3月5日、南西諸島北方の海域でアメリカ海軍の潜水艦『タイルフィッシュ』による魚雷攻撃を受け、ついに沈没しました。

これにより、第十三号型掃海艇は全4隻が戦没し、その歴史に幕を閉じました。この艇型は、当時の日本海軍の設計上の課題を象徴するとともに、限定的ながらも太平洋戦争を戦い抜いた掃海艇としての役割を果たしました。

各艇の詳細は以下の通りです。

第13号: 昭和8年8月31日、藤永田造船所にて竣工。昭和17年1月12日、タラカン沖にて陸上砲台の攻撃により沈没。
第14号: 昭和8年9月30日、大阪桜島造船所にて竣工。昭和17年1月12日、タラカン沖にて陸上砲台の攻撃により沈没。
第15号: 昭和9年8月21日、藤永田造船所にて竣工。昭和20年3月5日、南西諸島北沖にてアメリカ潜水艦「タイルフィッシュ」の雷撃により沈没。
第16号: 昭和9年8月21日、三井玉造船所にて竣工。昭和18年9月11日、マカッサル沖にて航空機の攻撃により沈没。

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