マカッサル

マカッサル：香辛料貿易から現代都市へ

マカッサルは、インドネシア南スラウェシ州の州都であり、スラウェシ島南部に位置する重要な都市です。かつてウジュン・パンダンと呼ばれたこの都市は、1971年に改名され、1999年に元の名称マカッサルに戻されました。現在では約134万人の人口を抱え、インドネシア第7位の都市として、東インドネシア地域の中核を担っています。

栄華を極めた交易港

マカッサルの歴史は古く、17世紀前半から後半にかけては、ゴワ＝タッロ王国（マカッサル王国）の中心地として、香辛料貿易の中継港として大きく発展しました。東南アジア島嶼部でも有数の大都市として栄え、世界中から商人たちが集まりました。マカッサルの王は自由貿易を政策として掲げ、イスラム教徒だけでなく、キリスト教徒を含む様々な宗教の商人たちが交易を行いました。オランダ東インド会社による専売制の試みも阻止するほどの勢力を持っていました。

16世紀初頭には、インドネシア東部を代表する貿易の中心地となり、中国人、アラブ人、インド人、タイ人、ジャワ人、マレー人など多様な人々が金属製品、織物、真珠、香辛料などを交易する国際的な貿易港として繁栄しました。1511年にはポルトガルの船員が初めてマカッサルに到達しています。強大なゴワ王国は11もの要塞を築き、海岸線を固めていました。

オランダ植民地時代とその後

17世紀前半、オランダ東インド会社が台頭すると、マカッサルの歴史は新たな局面を迎えました。1667年、オランダはポルトガルからマカッサルを奪取し、植民地化しました。オランダは香辛料貿易の支配を確立するため、マカッサルの要塞を奪取し、「ロッテルダム要塞」と改名してゴワ王国の抵抗を鎮圧しました。ジャワ戦争後には、ディポヌゴロが1855年に没するまでロッテルダム要塞で暮らしました。

オランダ統治下でも、マカッサルはコプラ、トウ、真珠、海鼠、香木などの東インドネシア産品が集まる交易の中心地として機能し続けました。オランダの支配は海岸部にとどまり、内陸部への支配が確立されたのは20世紀前半になってからです。この頃には、オランダ人宣教師によるキリスト教布教も盛んに行われていました。1938年には人口が8.4万人に達し、作家ジョセフ・コンラッドはマカッサルを「香辛料諸島の中で最も小さく、恐らく最も清潔な町」と評しました。

第二次世界大戦では、日本軍の侵攻を受けました。1942年2月9日、日本軍がマカッサル近郊に上陸し、オランダ軍はゲリラ戦を経て捕虜となりました。同年8月には、南西方面海軍民政府が開庁し、日本の統治下に入りました。インドネシア独立後も、マカッサル暴動などの歴史的出来事を経て現在に至ります。

現代のマカッサル

現代のマカッサルは、南スラウェシ州の主要港として、国内外への定期航路を有し、ピニシ船（Pinisi boat）による長距離輸送の拠点となっています。また、ハサヌディン国際空港も備え、交通の要衝となっています。かつてはマカッサル油の輸出でも知られており、マカッサルコクタンという希少価値の高い木材も産出されます。歴史的建造物は近代化によって減少していますが、ハサヌディン大学などの教育機関も存在し、文化と経済が発展する都市として現在も発展を続けています。世界各地と姉妹都市提携を結び、国際的な交流も盛んです。

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