第十東予丸沈没事故

第十東予丸沈没事故

1945年11月6日、瀬戸内海で発生した第十東予丸沈没事故は、愛媛県史上最悪の海難事故として知られています。この事故では、多くの復員軍人を含む多数の乗客が犠牲となりました。

事故の概要

事故が発生したのは、1945年11月6日の午前9時30分頃です。尾道港から今治港へ向かっていた瀬戸内海汽船所有の連絡船「第十東予丸」（162トン）は、越智郡伯方町（現在の今治市）沖合で、突風に煽られて転覆・沈没しました。

当時、付近では複数の漁船が操業しており、また、愛媛汽船の旅客船「鷹島丸」や、伯方消防団の救助船、警察船「あさぎり丸」などが救助活動にあたりましたが、強風と激しい潮流のため、救助活動は困難を極めました。伯方町では、役場内に救護本部を設置し、生存者の救護や収容、衣類の提供、炊き出しなどを実施しました。また、町内の砂浜は臨時の遺体安置所となりました。

第十東予丸は、乗客定員210人のところ、済州島からの復員軍人約400人と一般客約180人、合わせて定員の3倍近い乗客を乗せていました。第二次世界大戦終戦直後の混乱期であったため、過積載の状態での航行を余儀なくされ、船の復元力が失われていたことが、事故の大きな要因となりました。

乗客名簿がなかったため、正確な遭難者数は不明ですが、乗員乗客約600人のうち、450人以上が死亡または行方不明になったとされています。ただし、慰霊祭の報道では、死者・行方不明者数を415人としています。

事故の影響

この事故の12年後には、芸予諸島で第五北川丸沈没事故が発生するなど、瀬戸内海では旅客船の海難事故が相次ぎました。これらの事故は、本州四国連絡橋の架橋運動を促進する大きなきっかけとなりました。

当初、芸予諸島を通るルートは、架橋効果が低いとされていましたが、地元住民の強い要望と、地元選出の越智伊平衆議院議員の尽力により、建設コストや技術的障壁が低いルートが採用され、1999年5月1日にしまなみ海道が開通しました。来島海峡SAには、越智自筆の碑が建立されています。

慰霊祭と慰霊施設

今治市伯方町木浦にある曹洞宗禅興寺の裏山墓所には、事故の遺族によって慰霊塔が建てられています。また、禅興寺本堂には合同位牌が祀られており、毎年11月には遺族や地元関係者が参列して慰霊祭が執り行われています（2025年は11月3日予定）。

木浦の六つ瀬磯には、事故海域に向かって慰霊地蔵が建てられており、禅興寺には犠牲者名簿が保管され、現在でも加筆・訂正が続けられています。

関連項目

* 紫雲丸事故・せきれい丸沈没事故 - 本州四国連絡橋架橋運動の契機となった他の海難事故。

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