第1リヨン公会議

第1リヨン公会議

第1リヨン公会議は、1245年6月28日から同年7月17日にかけて、当時神聖ローマ帝国の支配下にあったリヨン（現在のフランス南東部）の司教座聖堂で開催されたカトリック教会の歴史において重要な公会議です。この会議は、教皇インノケンティウス4世によって召集され、その主要な目的は神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世の弾劾と処分にありました。

開催の経緯

13世紀中頃、教皇権と神聖ローマ皇帝権は、イタリア半島の支配権をめぐって激しく対立し、収拾のつかない状況に陥っていました。特に皇帝フリードリヒ2世は、教皇領を圧迫し、武力をもって教皇を実質的に包囲下に置きました。この危機的状況から脱出した教皇インノケンティウス4世は、ジェノヴァを経てリヨンへ避難し、1244年12月にこの地に到着しました。教皇はリヨンを拠点として、翌1245年1月に世界中の司教に対して公会議への召集を呼びかけました。

会議の内容

1245年6月、約150名に及ぶ聖職者、主にアンティオキアおよびコンスタンティノープルのラテン大司教、アクイレイア大司教といった高位聖職者や、フランス、スペインなど西欧各国の司教が集まり、公会議が始まりました。また、フランス王ルイ9世など、世俗の有力者も参加しました。会議の中心的な議題は、長らく教皇と対立してきた皇帝フリードリヒ2世の行動に対する審議でした。

フリードリヒ2世に対する主な訴追内容は以下の通りです。

平和の破壊者としての行為
聖職者を投獄し、教会財産を没収したこと
異端であるという疑い
イスラム教徒との親和性を示す行為

これらの罪状に基づき、皇帝に対する弾劾が進められました。会議では、皇帝側からの弁明も許されましたが、最終的に参加者は皇帝の有罪を認めました。そして、会議はフリードリヒ2世から神聖ローマ皇帝としての地位を剥奪するという、極めて重大な決定を下しました。

しかし、公会議で討議された内容は、皇帝問題に留まりませんでした。当時のキリスト教世界は、東方からの新たな脅威であるモンゴル帝国の侵攻に直面しており、その対応策についても話し合われました。この会議での決定の一つとして、教皇使節プラノ・カルピニがモンゴル帝国へ派遣されることになります。また、東方に設立されたラテン帝国の支援や、イスラム勢力に対する新たな十字軍（第七回十字軍）の編成についても議論が交わされました。

歴史的意義

第1リヨン公会議における最大の出来事は、教皇が公会議の権威をもって現職の神聖ローマ皇帝を罷免したことでした。これは、中世において教皇権力が世俗の最高権力である皇帝権力の上に立つことを明確に示した出来事であり、教皇権の絶頂期を示す象徴的な行為と言えます。

しかし、この行為は同時に、教皇と教会が世俗の政治的な争いに深く介入し、その権威を世俗の権力争いによって汚され、あるいはコントロールされる危険性を増大させるものでもありました。皇帝による教皇の罷免という前例は、後の世における教皇と皇帝の対立をさらに激化させ、キリスト教世界の内部における分裂や混乱を招く一因ともなり得たのです。

このように、第1リヨン公会議は、教皇権の力と影響力が頂点に達した瞬間を示すと同時に、教会が世俗の権力構造の中に深く組み込まれていく過程の一段階を示す重要な歴史的会議でした。

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