第1打撃軍

第1打撃軍

概要

ソビエト赤軍の第1打撃軍（ロシア語: 1-я ударная армия）は、第二次世界大戦中に創設された重要な軍団の一つです。1941年後半に編成され、終戦となる1945年まで、主にロシア北部やバルト諸国における枢軸国軍との戦いを遂行しました。当初は、戦前の軍事思想に基づき、強固な敵防御陣地を突破するための特殊な「打撃軍」として設計されました。これは、縦深攻撃を可能とする十分な規模と機動力を併せ持つ部隊として構想されていましたが、戦争の長期化とともに、その特定の役割は次第に薄れ、他の前線部隊と同様の一般的な編成へと変化していきました。

歴史

第1打撃軍の歴史は、ドイツ軍によるソ連侵攻後の緊迫した状況下で始まります。1941年11月、モスクワ軍管区内の都市ザゴルスク（現在のセルギエフ・ポサード）において、最高総司令部予備（スタフカ予備）の一部として編成されました。

その誕生から間もない1941年12月1日には、ドイツ軍によるモスクワへの攻勢を阻止するための防衛戦に投入されました。この初期編成時には、第133狙撃師団に加え、第29、第44、第47、第50、第55、第56、第71、第84、第84狙撃旅団など計9個の狙撃旅団、さらに第17騎兵師団、2個戦車大隊、スタフカ予備の砲兵連隊、そして各種支援部隊が傘下にありました。特に注目すべきは、編成された狙撃旅団の多くが、太平洋艦隊に所属していた海軍関係者を中心に構成されていた点です。

モスクワ防衛戦後、第1打撃軍は北方の戦線へと移動しました。スタラヤ・ルーサへ空路で展開し、1942年にはデミャンスクにおける激しい戦闘に参加しています。その後も戦線の北部中央部で活動を続け、再びスタラヤ・ルーサ近郊での戦闘を経験しました。1942年から1944年にかけては、レニングラード＝ノヴゴロド攻勢、プスコフ＝オストロフ攻勢、タルトゥ攻勢、そして1944年のリガ攻勢など、ソビエト赤軍による主要な攻勢作戦の数々に加わりました。

戦況がソ連有利に傾き、戦線が西方へ移るにつれて、第1打撃軍はバルト諸国各地で戦いを繰り広げました。戦争の終結が近づく1945年5月時点では、部隊は精鋭化されており、第1狙撃軍団、第8エストニア狙撃軍団、第119狙撃軍団、第123狙撃軍団という4個狙撃軍団を基幹としていました。これに加えて、3個砲兵師団、砲兵軍団、砲兵旅団、戦車旅団、そして戦車や突撃銃で増強された7個連隊などが配属され、その戦闘力は大きく強化されていました。最終的には、ラトビア北部のクールラント半島に孤立し包囲されたドイツ軍クールラント軍集団の抑えとして、そこで終戦を迎えました。

第二次世界大戦の終結後、第1打撃軍は解散の途をたどります。1945年7月9日、本部がトルキスタン軍管区として再編成された司令部によって、正式に解隊されました。

司令官

第二次世界大戦中に第1打撃軍を指揮した主な司令官は以下の通りです。

ヴァシーリー・クズネツォフ 中将 (1941年11月 - 1942年5月)
ウラジーミル・ロマーノフスキー 中将 (1942年5月 - 1942年11月)
ヴァシーリー・モロゾフ 中将 (1942年11月 - 1943年2月)
ゲンナジー・コロトコフ 中将 (1943年2月 - 1944年4月)
ニーカンドル・チービソフ 上級大将 (1944年4月 - 1944年5月)
ニカノール・ザフヴァターエフ 中将 (1944年5月 - 1945年1月)
* ウラジーミル・ラズヴァーエフ 中将 (1945年2月 - 1945年5月)

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