第1期名人戦 (囲碁)

第1期名人戦：新たな時代の幕開け

1975年、長年続いた名人戦の主催が読売新聞から朝日新聞へと移管され、翌1976年に新たな幕開けとなる第1期名人戦が開催されました。この大会は、囲碁界にとって単なる主催者の変更以上の意味を持ち、新たな時代への移行を象徴するものでした。

受け継がれる伝統、新たな挑戦

第1期名人戦は、旧名人戦のシステムを踏襲し、最後の名人位保持者であった大竹英雄が、挑戦者決定リーグを制した石田芳夫の挑戦を受けるという形で七番勝負が行われました。石田は前期名人位を大竹に奪われており、リベンジをかけた戦いでもありました。

対局の新風

この名人戦では、新たな試みとして対局室でのテレビカメラによる撮影が開始30分まで許可されるようになりました。これにより、ファンはより身近に名人戦の雰囲気を味わえるようになりました。また、宝塚市で行われた第二局では、大阪千里の万博記念公園で囲碁フェスティバルが開催され、参加者の中から抽選で20名が対局を15分間観戦するというイベントも行われました。

挑戦者決定リーグ

挑戦者決定リーグには、前期挑戦者の石田芳夫、シードの藤沢秀行、坂田栄男、橋本宇太郎、林海峰、山部俊郎に加え、新たに窪内秀知、梶原武雄、工藤紀夫の計9名が参加しました。リーグ戦の結果、石田と林海峰が6勝2敗で並びましたが、前期順位が上位であった石田が挑戦権を獲得しました。

七番勝負：大竹英雄の防衛

七番勝負は1976年9月16日に開幕し、広尾羽沢ガーデンでの第一局は大竹が先番で中国流布石を敷き、中押勝を収めました。続く宝塚市での第二局、石田の地元に近い犬山市明治村での第三局も大竹が制し、3連勝。大竹の地元である北九州市での第四局で石田が1勝を返しましたが、伊東市での第五局も大竹が勝利し、4勝1敗で大竹が名人位を防衛しました。

対局の分析

石田は七番勝負を通して持ち時間をほぼ使い切り、終盤で秒読みに追われる場面が多く見られました。一方、早打ちの大竹は、第二局で4時間45分、第四局で5時間59分、最終局でも6時間30分と、夕食休憩前に終局することが多く、対照的な対局スタイルが際立ちました。

第五局：大竹名人の妙手

石田が3連敗後1勝を挙げた後の第五局、序盤は白番の石田のペースに見えましたが、大竹は黒47手目のコスミツケから、隅を巧みに処理し、黒5と打ち、優位に立ちました。その後、隅の手順で石田が誤り、大竹が勝勢を確立。129手までで大竹が中押勝し、名人位を防衛しました。解説の林海峰は、石田が黒46手目の△で7の点に飛んでおけば、黒の薄味を守るのが難しかっただろうと指摘しました。

第四局：石田の意地

石田が1勝を挙げた第四局では、先番の石田が29手目に利かしを狙ったのに対し、大竹が反発。一日目の封じ手は石田が1時間20分を費やした右辺のツケでした。二日目に入り、石田がペースを握りましたが、大竹の白16が悪手となり、石田が中央を厚くし優勢に。その後、石田が右上で失着し、中央に大きな白地ができたものの、リードを守り切り、229手までで2目勝ちを収めました。

第1期名人戦は、大竹英雄の防衛という結果に終わりましたが、新たな試みやドラマチックな展開が繰り広げられ、囲碁界に新たな息吹を吹き込む大会となりました。

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