中国流

中国流（ちゅうごくりゅう）

中国流は、囲碁における布石の一種で、星、小目、辺の星脇という三つのポイントを組み合わせた独特の配置が特徴です。別名、安永流とも呼ばれています。この布石は、その展開の速さと、中央への影響力の大きさが特徴で、従来の布石の概念を大きく変えるものでした。

配置と特徴

中国流の基本的な配置は、盤面の隅の星と、そこから一段下がった小目、そして辺の星脇に石を置く形です。この配置は、三連星に似ていますが、一方の隅が小目である点が異なります。このため、地を固めるには少し弱く、中央の勢力を重視する布石と言えます。また、辺の石をさらに一段高く打つ「高い中国流」というバリエーションもあります。

中国流は、黒番だけでなく、白番でも打たれることがありますが、その場合はやや特殊な状況となります。この布石が画期的だったのは、「小目からシマリを省略して辺へ展開する」という考え方を提示した点です。この考え方は、その後の布石理論に大きな影響を与え、ミニ中国流や小林流といった新しい布石を生み出すきっかけとなりました。

歴史

小目からシマリを省略して星脇へ展開する手法自体は、江戸時代初期に本因坊道策が使用していましたが、本格的な中国流の開祖は安永一とされています。中国では陳祖徳がこの布石を広めました。1965年の日中囲碁交流の際に、その独創的な布石が注目を集め、日本に逆輸入される形で普及しました。日本棋院に残る棋譜では、1966年の河合哲之四段の対局が最初の記録とされています。1970年頃から、島村俊廣が実戦で継続的に使用し、その後、加藤正夫や藤沢秀行といった著名な棋士も常用したことで、中国流は大流行しました。コンピュータ囲碁が発展した2020年代においても、その研究は続いています。

概要

中国流の最大の特徴は、小目へのシマリを省略して辺へ迅速に展開する点にあります。それまで、シマリが布石の最優先事項と考えられていた時代に、この考え方は大きな変革をもたらしました。相手が、配石の間に入り込んできた場合は、厳しく攻撃し、外からカカってきた場合は、自然と大きな模様が完成します。この攻撃性と発展性も中国流の大きな特徴です。そのため、中国流への対策として、通常のカカリではなく「裏ガカリ」といった、変則的な手法が試みられるようになりました。

白の対策

内カカリ

早い段階で中国流の内側に入り込むと、ヒラキを制限され、根拠を失いやすく、黒の厳しい攻めを受けることになります。

ヒラキ

白がヒラいた場合、黒も同様にヒラき、内側へのカカリを誘います。中国流は、模様を大きく広げ、相手の侵入を誘って厳しく攻めることを基本としています。白が侵入せずに下辺を固める場合は、黒が効率よく地を固めることができます。この場合、白はやや狭く、凝った形になってしまうことがあります。

裏ガカリ

変則的なカカリである「裏ガカリ」は、中国流の発展を妨害する目的で使用されます。この場合、黒はハサむ手を研究することで対抗します。また、その他の様々な着手が試されています。

小目にツケ

コンピュータ囲碁の発展以降、小目に頭をツケる手が有力視されるようになりました。この手法は、黒のヒラキを狭くし、白を安定させるため、中国流の頻度を減少させる要因となりました。

ダイレクト三々

ダイレクト三々という手法は、中国流に対して直接三々に打ち込むもので、これも中国流対策の一つとして注目されています。

中国流封じ

白が先にカカってしまうと、黒は中国流の形にすることができなくなります。また、小目に打つことも中国流を封じる有効な手段です。

バリエーション

高中国流

高中国流は、辺の石をさらに一段高く打つ手法で、羽根泰正が得意としていました。21世紀以降は、やや地に甘いとして使われる頻度は減りましたが、研究を重ねて使用する棋士もいます。1970年に武宮正樹が初めて打ったとされています。

スモール中国流

近年では、黒の石を小目寄りにずらしたスモール中国流がよく打たれています。これは河野臨がよく用いることから「臨戦中国流」とも呼ばれていますが、「偏中国流」、「ベトナム流」、「オバマ流」、「黄金流」など、様々な呼び方が存在し、まだ定まっていません。河野臨自身は、著書の中でこの布石を「スモール中国流」と名付けています。

参考図書

以下は、中国流に関する参考文献です。

加藤正夫『囲碁・中国流必勝法―大局観と戦いの力をつける』（日本文芸社） 1987年
羽根泰正『囲碁戦略・高中国流 (天下六段)』（日本棋院） 1988年
羽根泰正『羽根泰正の中国流で勝つ』（日本放送出版協会） 1994年
加藤正夫『中国流の戦い方』（棋苑図書） 1998年
林海峰『システム布石 中国流』（誠文堂新光社） 2002年
呉清源 『呉清源 二十一世紀の布石〈3〉星・中国流篇』（河出書房新社） 2003年
小松英樹『中国流の徹底解明―有利に戦う4対1の理論』（毎日コミュニケーションズ） 2004年
小松英樹『決定版!中国流布石だけで勝つ方法』（毎日コミュニケーションズ） 2010年
河野臨『スモール中国流布石 徹底ガイド』（毎日コミュニケーションズ） 2011年
小松英樹『基礎からわかる 中国流布石の教科書～知らなければハマり、知っていても互角以上! ～』 2013年
鶴山淳志『三連星・中国流・小林流を極める72の手筋』（マイナビ） 2018年
望月研一『中国流の新常識～序盤戦術を変えたヒラキ方と三々への手抜き～』（マイナビ） 2018年

関連項目

三連星
ミニ中国流
* 小林流

もう一度検索