第1軍団アディウトリクス

第1軍団アディウトリクス：動乱の時代を生き抜いた忠誠の軍団

第1軍団アディウトリクス(Legio prima adiutrix)は、ローマ帝国の激動期に誕生し、数々の戦場でその名を刻んだ軍団です。その起源は、ネロ帝に対する反乱を企てたガルバによって68年に編成されたと考えられています。344年には属州パンノニアのブレガティオ（現在のハンガリー、コマーロム近郊）に駐在していた記録が残っており、その活動の終焉を知ることができます。軍団の紋章には、カプリコーンが用いられ、ペーガソスやイルカもガレアに描かれていました。

誕生と初期

その前身は、第1軍団クラシカ(Legio I Classica)であるとされています。ネロ帝によってローマ海軍の陸兵から集められ、ガルバによって軍団として正式に編成されました。当初はローマ近郊に駐屯し、帝都の防衛を担っていました。

四皇帝の年

69年の四皇帝の年、軍団はオトを支持し、ウィテリウスとのベドリアクムの戦いに参加しましたが、敗北を喫しました。勝利したウィテリウスは、第1軍団アディウトリクスをスペインへ派遣し、バタヴィア人の反乱鎮圧に当たらせました。

モグンティアクムへの駐屯

記録に残る最初の駐屯地は、モグンティアクム（Moguntiacum - 現在のマインツ）です。ここでは、第14軍団ゲミナとともに駐在し、主に建築作業に従事しました。83年には、シャッティ族がライン川を越えて侵入したため、ドミティアヌスの命令により迎撃に当たりました。その後、軍団はパンノニアのドナウ川流域へ移動し、ダキア討伐に参加することになります。

ピア・フィデリス

96年にドミティアヌス帝が暗殺されると、ドナウ川沿岸の軍団は政治的な影響力を強めます。ネルウァ帝に対し、トラヤヌスを後継者とするよう圧力をかけ、トラヤヌスが皇帝に即位しました。この功績により、軍団は「ピア・フィデリス（Pia Fidelis - 『忠実で誠実なる軍団』の意）」という称号を授与されました。101年から106年まで、トラヤヌスの命により第4軍団フラウィア・フェリクス及び第13軍団ゲミナとともにダキア人討伐に参加し、新たな属州ダキアを設置します。トラヤヌスは、第1軍団アディウトリクスをパルティア討伐（115年-117年）にも参加させましたが、後を継いだハドリアヌス帝は、軍団を後方のブレゲティオ（Bregetio）へ転属させました。

その後、十数年間、軍団はドナウ川の国境沿いに駐在し続けました。マルクス・アウレリウス帝の時代には、マルクス・ウァレリウス・マクシムスの指揮下でマルコマンニ族と戦いました。171年から175年までの短期間はペルティナクスが指揮を執り、セプティミウス・セウェルスが帝位につくと、これを支持しローマまで進軍しました。

その後の数十年は再びパンノニアに駐屯し、パルティアとの戦争に参加します。具体的には、195年の戦役、そして197年から198年にかけてはセウェルス帝の指揮下で198年のクテシフォンの戦いに参加しました。215年から217年まではカラカラ帝の指揮下で、244年にはゴルディアヌス3世の指揮下でパルティア遠征に参加しています。

第1軍団アディウトリクスは、その長い歴史の中で、数々の戦役を経験し、ローマ帝国の拡大と防衛に貢献しました。その忠誠心と勇敢さは、「ピア・フィデリス」の称号にふさわしいものでした。

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