第126師団 (日本軍)

第126師団

第126師団は、1945年（昭和20年）1月16日に、大日本帝国陸軍の軍令によって編成が発令された師団の一つです。太平洋戦争末期、南方戦線への部隊転用が進む中で、満洲の防衛力強化を目的として、新たに編成された8個師団の一つとして誕生しました。

編成と満洲での配置

第126師団は、半截河要塞と廟嶺要塞の守備隊を主力とし、第25師団、騎兵第3旅団、観月台要塞の守備隊からの抽出人員を基幹として、1945年3月10日に満洲東安省で編成されました。編成後、第5軍に編入され、満洲東部の中心都市である牡丹江正面の国境警備を担当することになりました。

当初、師団の砲兵戦力は小型の師団砲兵隊に限定され、定員は約12,500人でした。しかし、7月の改編により、師団砲兵隊は野砲兵第126連隊として強化され、師団挺進大隊も新設されました。これにより、定員は約15,000人まで増加しました。さらに、第25師団の転用に伴い、同師団の残留兵も編入され、兵力は19,000人を超える過充足状態となりました。

装備と戦力

兵員数こそ充足していたものの、装備は大きく不足していました。師団砲兵は旧式の改造三八式野砲や10センチ榴弾砲に代用迫撃砲を加えた計21門という状況で、歩兵砲も本来の半数しかなく、連隊砲・速射砲各2門の中隊編成でした。また、機関銃や弾薬も不足しており、兵員の練度も低い状態でした。常備師団である第12師団と比較すると、その戦力はわずか20%程度と見積もられていました。

ソ連軍の侵攻と戦闘

1945年8月9日、ソ連軍が対日参戦を開始すると、第126師団は国境から60kmの地点に主力を配置し、一部を国境付近に展開していました。ソ連軍の奇襲攻撃により、国境付近の前衛部隊は、圧倒的な戦力差があるソ連軍第1極東戦線（6個歩兵師団と3個戦車旅団を基幹）と交戦することになりました。

前衛拠点は全滅するまで戦い、師団主力の掖河集結、第135師団の林口転進、満蒙開拓団の避難を援護しました。8月12日には、移動中の野砲兵第126連隊残留隊が交戦し、後を追って避難中の民間人も戦闘に巻き込まれ全滅する悲劇（麻山事件）も発生しました。

転進した師団主力は、独立速射砲第31大隊第2中隊、野戦重砲兵第20連隊第3中隊、工兵第18連隊の2個中隊などの配属を受け、第135師団と共に牡丹江前面の掖河付近に防衛線を展開しました。8月14日からはソ連軍の本格的な攻撃を受け、重装備のほとんどを失いながらも、8月16日までソ連軍を阻止し、牡丹江市街の在留邦人の脱出を助けました。この抵抗により、ソ連軍は牡丹江の短期攻略を断念し、主力は市の南側を迂回して進撃しました。

その後、第126師団は第5軍の転進命令に従い、8月17日には牡丹江北西の横道河子まで退却し、その地で停戦命令を受けました。8月18日には武装解除を終え、終戦を迎えました。

戦後と犠牲者

生き残った将兵はシベリアに抑留され、過酷な環境下での労働を強いられました。戦死者とシベリア抑留による死者を合わせると、約4,000人が犠牲になったと推定されています。

師団概要

歴代師団長

（心得）野溝弐彦 少将：1945年1月20日 - 1945年3月1日
野溝弐彦 中将：1945年3月1日 - 終戦

参謀長

田中正司 中佐：1945年1月25日 - 終戦

最終司令部構成

参謀長：田中正司大佐
参謀：萩野重幸中佐

最終所属部隊

歩兵第277連隊（都城）：山本義雄大佐
歩兵第278連隊（熊本）：山中肇大佐
歩兵第279連隊（鹿児島）：菊池永雄大佐
野砲兵第126連隊
第126師団挺進大隊
第126師団通信隊
第126師団工兵隊
第126師団輜重隊

参考文献

秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』第2版、東京大学出版会、2005年。
外山操・森松俊夫編著『帝国陸軍編制総覧』芙蓉書房出版、1987年。
外山操編『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』芙蓉書房出版、1981年。
『別冊歴史読本 戦記シリーズNo.32 太平洋戦争師団戦史』、新人物往来社、1996年。
中山隆志 『満洲1945・8・9 ソ連軍進攻と日本軍』 国書刊行会、1990年。

関連項目

* 大日本帝国陸軍師団一覧

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