第14循環

第14循環

第14循環（だい14じゅんかん）は、戦後日本における景気循環の一つであり、内閣府によって定義された期間（景気基準日付の第14循環）である。この循環は2002年2月から2009年3月までの86か月間を指し、長期の景気拡大とその後の後退が特徴である。

景気拡張と「いざなみ景気」

第14循環においては、2002年2月から2008年2月までの73か月という長期にわたる景気拡張期があった。この伸びは、過去の「いざなぎ景気」（57か月）を上回り、神話に由来する「いざなみ景気」と呼ばれた。これは、好景気であったにもかかわらず、実質GDP成長率は低調で、いざなぎ景気やバブル景気に比べて経済成長の実感は薄かった。

好景気の要因は、金融緩和政策や輸出の増加、企業の設備投資などにあり、特に2001年からのゼロ金利政策が大きな影響を与えた。輸出関連企業は、継続的な成長を遂げ、業績も好転していった。また、企業は大卒新卒だけでなく中途採用も行い、労働市場に変化が見られた。

しかし、この経済成長は全体的な所得の伸びを伴わなかったため、特定の地域や業種においてのみ雇用が逼迫する状況が生じた。大企業の好況に対して、中小企業や地域の経済は停滞し、労働者の賃金上昇も頭打ちであった。

後退期とリーマン不況

2008年に入ると、サブプライム問題を発端とする世界金融危機の影響で、景気は後退に転じた。特に2008年9月のリーマン・ショック後、急速に悪化し、内閣府は2008年2月を拡張期の山とし、以降の景気後退を正式に認めた。この後退期は「リーマン不況」と呼ばれ、世界的な景気悪化と経済情勢の厳しさが日本経済にも影響を与えた。

景気後退の過程では、輸出の大幅な減少や消費の低迷が顕著で、特にアメリカ市場での消費減退が日本経済にも大きな打撃を与えた。2008年末から2010年にかけて、日本の実質GDPもマイナス成長となり、企業の倒産が相次いだ。

働き方の変化と社会の課題

この期間、特に注目されたのは非正規雇用の増加と、ワーキングプアの問題である。企業は正規職員を減らし、非正規雇用を拡大する一方、賃金の格差が広がり、「格差社会」という言葉が多く用いられるようになった。景気回復期に非正規雇用が急増した結果、労働市場は不安定な状況に陥り、社会全体に影響を及ぼした。

さらに、就職氷河期世代の若者たちは、正規雇用の道が狭まり、不安定な雇用状況に苦しむこととなる。社会全体が変化する中で、不平等や経済格差の問題が浮上し、政治やメディアにおいても重要な話題となった。

結論

第14循環は、戦後日本経済の中で特異な期間であり、長期的な景気拡張とそれに続く急激な後退が印象的である。この経験から、日本社会は景気循環の波にどう適応していくかを常に考え続ける必要があり、経済政策や雇用政策についても新たな視点を求められる時期に入るのである。

もう一度検索