第2回全国中等学校優勝野球大会

1916年（大正5年）8月16日から8月20日までの5日間、豊中グラウンドを舞台に第2回全国中等学校優勝野球大会が開催されました。

この大会では、地方予選のあり方が大きく見直されました。
第1回大会で参加が限られていた東日本では、東京朝日新聞社（東朝）の主催により、北海道と東北6県を対象とした東北大会、関東7府県を対象とした関東大会がそれぞれ独立して実施されました。
一方、第1回大会では日程が重複し、全国大会への参加を断念せざるを得なかった北陸地方（甲信越含む）では、第四高等学校主催の北陸野球大会が日程調整され、これが事実上の北陸大会と位置づけられました。
関西地方でも予選方法が変更され、前回の美津濃商店主催大会の一部を関西大会とするのではなく、大阪朝日新聞社主催による奈良県・和歌山県対象の紀和大会、大阪高商主催による大阪府対象の大阪大会が新たに設けられました。
これらの再編の結果、地方大会の数は第1回大会から2つ増え、合計12大会から代表校が出場することとなりました。

大会方式においても新たな試みが導入され、この第2回大会から史上初めて敗者復活制が採用されました。
これは、1回戦で敗退した6校の中から抽選で選ばれた2校が、準々決勝として再び対戦するというユニークな仕組みでした。

また、この大会は国際的な側面でも注目されました。
慶応普通部の一塁手として出場したジョン・ダン選手はアメリカ合衆国籍であり、全国中等学校優勝野球大会史上初めて外国人選手が参加した大会となりました。
彼は、日本政府の「お雇い外国人」として貢献したエドウィン・ダンの三男です。
2回戦の香川商戦では3安打を放つ活躍を見せ、観客から「異人さん、いいぞ」と声援と拍手を浴びました。

決勝戦は、市岡中と慶応普通部の顔合わせとなりました。
市岡中は、準決勝でエースの松本終吉選手が右肩を強く打って負傷するというアクシデントに見舞われました。
そのため、急遽捕手の富永徳義選手が投手、左翼手の田中勝雄選手が捕手を務めるという、異例の急造バッテリーで決勝に臨むこととなりました。
一方の慶応普通部は、3回裏に市岡中の守備が3つの失策、1つの野選、1つの四球と大きく乱れた隙を逃さず、これに2本の安打を絡めて一挙に5点を奪い、試合の主導権を握りました。
慶応普通部のエース、山口昇選手は、この試合を3安打11奪三振無四球で完投する圧巻の投球を見せました。
なお、山口選手は当時、慶應義塾大学の正選手としても活躍しており、このような中等学校と大学の掛け持ちが可能だった背景には、当時の選手資格に関する規定が現在ほど厳格ではなかったことが挙げられます。

以下に、この大会の記録の一部を示します。

代表校

• - 北海道・東北：一関中（岩手）
• - 関東：慶応普通部（東京）
• - 北陸：長野師範（長野）
• - 東海：愛知四中（愛知）
• - 京津：京都二中（京都）
• - 大阪：市岡中（大阪）
• - 兵庫：関西学院中（兵庫）
• - 紀和：和歌山中（和歌山）
• - 山陽：鳥取中（鳥取）、広島商（広島）
• - 四国：香川商（香川）
• - 九州：中学明善（福岡）

主な試合結果
1回戦

• - 市岡中 6 - 2 長野師範
• - 広島商 19 - 4 中学明善
• - 香川商 2 - 1 関西学院中
• - 慶応普通部 6 - 2 愛知四中
• - 和歌山中 2 - 1 鳥取中
• - 一関中 3x - 2 京都二中

準々決勝

• - 慶応普通部 9 - 3 香川商
• - 和歌山中 6 - 4 広島商
• - 市岡中 8 - 0 一関中
• - 鳥取中 9 - 6 中学明善（敗者復活戦）

準決勝

• - 慶応普通部 7 - 3 和歌山中
• - 市岡中 5 - 4 鳥取中（延長10回）

決勝

• - 慶応普通部 5 - 1 市岡中

大会本塁打

• - 第1号：柚花尋（広島商）
• - 第2号：松本終吉（市岡中）
• - 第3号：足立信夫（慶応普通部）
• - 第4号：山口昇（慶応普通部）

その他の主な出場選手

• - 新田恭一（慶応普通部）
• - 小笠原道生（和歌山中）
• - 石本秀一（広島商）

この大会は、地方予選の整備や敗者復活制の導入、初の外国人選手の出場など、その後の大会運営に影響を与える画期的な要素が多く含まれた大会として記憶されています。

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