第2次トランプ政権による不法移民の強制送還

2025年アメリカ合衆国における不法移民の大量強制送還

2025年1月20日、ドナルド・トランプ大統領の2期目の就任式が行われた直後、アメリカ合衆国では大規模な不法移民の強制送還が開始されました。この政策は、トランプ大統領が過去の選挙戦で公約として掲げてきたものであり、就任と同時に実行に移されました。

強制送還の開始と背景

2025年1月23日、アメリカ合衆国移民・関税執行局（ICE）は、聖域都市と呼ばれる不法移民に寛容な都市での家宅捜索を開始し、数百人の不法移民を拘束して強制送還しました。さらに、トランプ政権は以前の方針を転換し、学校、病院、礼拝所など、これまで捜索が制限されていた場所でのICEの活動を許可しました。報道によると、2024年末には不法移民関連の裁判が約350万件も係争中であり、国外退去命令が出ても出頭しないケースが全体の35%に達していました。

選挙戦からの公約

トランプ大統領は、2016年の大統領選挙戦から不法移民の強制送還を公約に掲げていました。2015年8月には、「自分が当選した場合、不法移民は迅速に退場することになる」と述べ、1950年代のアイゼンハワー政権が行った「ウェットバック作戦」を模倣した強制送還部隊の設置を提案しました。しかし、選挙期間中には「大量強制送還」という言葉を否定する場面もありましたが、最終的には「不法に米国に入国した者は誰でも国外追放の対象になる」という強硬な姿勢を示しました。

第1次トランプ政権とバイデン政権

第1次トランプ政権下では、不法移民の強制送還数は減少していました。オバマ政権下での強制送還数には及ばず、トランプ大統領の在任期間中の総送還数は100万人弱にとどまりました。しかし、2024年の選挙戦では、「第1次トランプ政権以上の移民取り締まり」を計画していると報じられ、大規模な収容所の準備や、既存の法令に依拠した強制送還の実施が示唆されました。

強制送還政策の内容

トランプ大統領は、合法移民と不法移民の区別を曖昧にし、どちらの移民も強制送還すると宣言しました。その人数は1500万人から2000万人に及ぶと表明しましたが、不法移民の推定数は約1100万人です。この計画には、数千億ドル規模の費用がかかると試算されており、GDPの縮小やアメリカ出身労働者の雇用減少などの経済的影響も懸念されています。

トランプ大統領はまた、子供を持つ家族の分離も否定せず、1950年代の「アイゼンハワー・モデル」に従って、年間数百万人の強制送還を目指すと述べました。そのため、適正手続きの審理を必要としない強制送還の形態を拡大する意向を表明しており、連邦捜査官による捜査から管轄をアメリカ合衆国移民・関税執行局、地元の警察官や保安官などに移管することとしました。

強制送還に対する各方面の動き

トランプ大統領の2024年大統領選勝利を受けて、私立刑務所運営会社の株価は大幅に上昇し、GEOグループのCEOは決算説明会でトランプの2度目の大統領就任を「前例のないチャンス」と呼びました。これは、強制送還政策によって私立刑務所の需要が高まると予想されているためです。

26州の共和党知事は、トランプ政権の強制送還政策を支持する姿勢を示しました。一方、国土安全保障省（DHS）は、病院、礼拝所、学校といった機密性の高い場所での不法移民保護政策を撤回し、複数の連邦政府機関の法執行要員を公認して、トランプ大統領の移民政策遂行を支援すると発表しました。

強制送還の実態

2025年1月23日には、アトランタ、ボストン、デンバー、マイアミ、ニューヨーク、ニューアーク、フィラデルフィア、シアトル、ワシントンD.C.でICEによる強制捜査が行われ、538人の不法移民が拘束されました。ホワイトハウスは、逮捕者にはテロリスト容疑者やギャングのメンバー、未成年者に対する性犯罪で有罪判決を受けた者も含まれていると発表しました。

メディア戦略と国際的な問題

トランプ政権は、強制送還の存在をメディアで煽るため、手錠をかけられた強制送還者の画像をソーシャルメディアに投稿したり、古いICEのプレスリリースのタイムスタンプを更新するといった戦略を取りました。しかし、航空機による送還では、手錠と鎖の使用について複数の国から問題が提起されました。

コロンビアのグスタボ・ペトロ大統領は、国外追放されるコロンビア人を乗せた米軍機の着陸を拒否し、強制送還者の尊厳ある扱いを求めました。パナマでは、第三国からの移民を乗せた米軍機が着陸し、移民たちはダリエン県のキャンプに移送されましたが、ジャーナリストや弁護士との接触が制限され、亡命希望者が迫害を恐れる状況も報告されました。

国内への影響

強制送還政策は、教育、経済、保健衛生など、アメリカ社会の様々な側面に影響を及ぼしています。カリフォルニア州など一部の地域では、ICE当局者への対応を制限する指令が出され、学校内での捜査に対する懸念が高まりました。農業セクターでは、労働力不足が深刻化し、食料システムの危機が懸念されています。また、病院では、ICEの捜査に関する警告が出され、医療施設に対する情報開示義務化の動きもありました。

その他の問題

強制送還の実施に伴い、ICE職員になりすました人物による事件も発生しており、誘拐や性的暴行などの犯罪が報告されています。また、アリゾナ州のナバホ・ネイションでは、部族民がICEに拘束される事例が報告され、人種プロファイリングの懸念が高まりました。

法的課題と抗議運動

シカゴでは、聖域都市に対する強制送還計画が合衆国憲法に違反するとして、トランプ政権を相手取った訴訟が起こされました。また、クエーカー教徒の連合は、礼拝所でのICEの捜査を阻止するための訴訟を起こしました。

トランプ政権の対移民政策に反対するデモが全米で発生し、逮捕者も出ています。これらの抗議運動は、トランプ政権の政策に対する国民の強い反発を示しています。

結論

2025年のアメリカ合衆国における不法移民の大量強制送還は、政治、経済、社会、国際関係など、多岐にわたる影響を及ぼしています。この政策は、トランプ政権の移民政策の根幹をなすものであり、その影響は今後も注視される必要があります。

関連項目
移民のいない日 (2025年)
アメリカ合衆国からの国外追放と退去
第1次トランプ政権の移民政策
アメリカ合衆国の不法移民
アメリカ合衆国の不法移民人口

外部リンク
American Immigration Council - Mass Deportation

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