第2次メイ内閣

第2次メイ内閣：成立から崩壊まで

2017年6月8日に行われたイギリス総選挙は、保守党にとって予想外の結果となりました。与党である保守党は議席数を減らし、下院で単独過半数を確保することができませんでした。これは、どの政党も過半数を獲得していない「ハング・パーラメント（宙ぶらりんの議会）」状態を意味します。

この結果を受け、テリーザ・メイ首相は難しい決断を迫られました。複数の政党との連立交渉も考えられましたが、メイ首相は北アイルランドの地域政党である民主統一党との協力協定（confidence and supply）締結という道を選びました。この協定は、民主統一党が予算案などの重要事項において保守党を支持することを約束する一方、連立政権を組むわけではないという、いわば「事実上の連立」と言えるものでした。

しかし、この協定はすぐに批判の的となります。保守党と民主統一党の協定が、北アイルランドの和平協定である「聖金曜日協定」に抵触する可能性や、贈収賄に当たるのではないかという懸念が、様々な方面から提起されました。

さらに、メイ首相自身への批判も高まりました。保守党党員の間では、メイ首相の辞任を求める声が多数を占めていました。世論調査でも、メイ首相への支持率は低迷し、辞任すべきとの意見が優勢でした。 ジョン・メージャー元首相も、この協定が北アイルランド和平交渉を危険にさらす可能性を懸念しました。 一方、野党の労働党は、メイ首相の少数与党内閣を早期に倒そうと動き始め、政策対案を準備しました。

内閣の閣僚人事も困難を極めました。EU離脱問題を巡っては、政権内部での意見対立が激しく、EU離脱派と残留派の間で激しい駆け引きが行われました。最終的には、EU離脱派と残留派の両方の閣僚が起用されるという結果になりましたが、この人事は、政権内の不安定さを象徴するものでもありました。

新内閣が発足したものの、メイ首相の苦境は続きました。世論調査では、メイ首相への支持率は低迷し続け、労働党への支持率は上昇しました。経済状況の悪化も、政府への批判を強める要因となりました。国民の生活水準が低下する中で、緊縮財政政策への批判が高まりました。

そして、EU離脱問題をめぐる政権内の対立は、ついに爆発します。2018年7月、EU離脱大臣と外務大臣が相次いで辞任しました。その後も、離脱協定案をめぐる紛糾は続き、閣僚の辞任が相次ぎました。議会はメイ首相のEU離脱協定案を承認せず、離脱は何度も延期されました。

最終的に、2019年6月、メイ首相は退陣を表明しました。第2次メイ内閣は、わずか2年足らずでその幕を閉じました。総選挙で単独過半数を失ったことから始まる、困難な状況の中で、メイ首相は民主統一党との協力協定という難しい選択を行い、政権維持に努めました。しかし、世論の批判、政権内部の混乱、そしてEU離脱問題という困難な課題を乗り越えることができず、歴史に残る短命政権となってしまいました。その過程は、現代イギリス政治における複雑な問題と、リーダーシップの難しさを浮き彫りにしています。メイ首相の決断とその後を受けた結果の分析は、今後のイギリス政治を考える上で重要な示唆を与えてくれるでしょう。

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