第21爆撃集団

第21爆撃軍（XXI Bomber Command）

第二次世界大戦の終盤に活動したアメリカ陸軍航空軍の主要な爆撃部隊の一つに、第20空軍隷下の第21爆撃軍（XXI Bomber Command）があります。この部隊は、特に長距離戦略爆撃機B-29「スーパーフォートレス」の運用を主目的とし、太平洋戦線における対日攻勢において重要な役割を担いました。

部隊の編成と目的

第21爆撃軍は1944年8月に編成されました。その設立の背景には、ケネス・B・ウルフ准将が推進した「ウルフ特別プロジェクト」があります。このプロジェクトは、当時開発が進められていた最新鋭の戦略爆撃機B-29を効果的に運用するために必要な、高度な技術を持つ搭乗員を育成することを目的としていました。第21爆撃軍は、この特別プロジェクトによって養成された精鋭のB-29クルーを集結させて組織された部隊でした。

部隊の主な任務は、日本本土に対する戦略爆撃でした。戦略爆撃は、敵国の工業生産力や交通網、士気といった継戦能力を組織的に破壊することを目的としたもので、特に軍事施設だけでなく、都市部や工業地帯も攻撃目標に含まれることがありました。B-29はその長大な航続距離と搭載能力により、マリアナ諸島などの太平洋上の拠点から日本本土への往復爆撃を可能にし、第21爆撃軍はこの能力を最大限に活用して大規模な空襲作戦を展開しました。

指揮官の変遷

部隊創設時、第21爆撃軍の司令官はヘイウッド・ハンセル准将でした。ハンセル准将は、B-29による高高度からの精密爆撃戦術を志向しました。しかし、上空の強風や気象条件の悪化、目標捕捉の困難さなどから、初期の作戦は必ずしも計画通りに進みませんでした。

この状況を受け、1945年1月、司令官はカーティス・T・ルメイ少将に交代しました。ルメイ少将は、これまでの戦術を一新し、低高度からの焼夷弾による夜間絨毯爆撃へと戦術を転換させました。この戦術変更は、その後の日本本土空襲に壊滅的な被害をもたらすこととなり、第21爆撃軍の活動は新たな局面を迎えました。

隷下部隊

第21爆撃軍の指揮下には、複数の爆撃団が編入されていました。部隊創設当初から主要な隷下部隊として活動したのは、以下の爆撃団です。

第73爆撃団
第313爆撃団
第314爆撃団
第315爆撃団

これらの爆撃団が、個別の作戦計画に基づき、実際の爆撃任務を実行しました。さらに、戦争が終盤に差し掛かった1945年4月以降は、太平洋戦線に展開していた別のB-29部隊である第58爆撃団も第21爆撃軍の指揮下に入り、部隊全体の作戦遂行能力が一層強化されました。

活動拠点

第21爆撃軍の司令部は、当初マリアナ諸島のサイパン島に置かれていました。サイパン島は、日本本土への長距離爆撃を行う上で戦略的に極めて重要な位置にありました。部隊の規模拡大や作戦範囲の広がり、そしてより大規模な支援施設の必要性などから、後に司令部は同じくマリアナ諸島のグァム島へと移転しました。グァム島はより広大な基地施設を有しており、多数のB-29を展開し、大規模な作戦を計画・実行するための主要拠点となりました。

第21爆撃軍は、第二次世界大戦におけるアメリカの対日戦において、B-29を用いた戦略爆撃の中核を担った部隊であり、その活動は戦争の推移に大きな影響を与えました。特に、日本本土への大規模な空襲は、その後の戦局を決定づける一因とも言われています。その歴史は、B-29という航空機、戦略爆撃という戦術、そして第二次世界大戦における太平洋戦争の進行を理解する上で、欠かせない要素の一つです。

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