第27SS義勇擲弾兵師団

第27SS義勇擲弾兵師団「ランゲマルク」（フラマン第1）

第27SS義勇擲弾兵師団「ランゲマルク」（フラマン第1）は、第二次世界大戦末期の1944年秋、ナチスドイツ武装親衛隊に編成された歩兵師団です。その起源は1941年に創設されたSS義勇部隊「フランダーン」に遡ります。この部隊は1943年にSS義勇突撃旅団「ランゲマルク」として再編成され、さらに師団へと拡充されました。主にベルギーのフラマン人義勇兵によって構成され、「フラマン第1」の副称を持ちますが、ドイツ人の将校や下士官も多く所属しました。1945年2月以降、東部戦線における激しい戦闘に投入されました。

義勇部隊設立の背景

1939年のドイツ国防軍によるポーランド侵攻の成功は、西ヨーロッパ各国のファシスト政党や親独団体に、ドイツこそが共産主義に対抗しうる存在であるとの認識を広げました。これと並行して、親衛隊全国指導者ハインリヒ・ヒムラーは、自らの組織である親衛隊にいわゆるゲルマン民族に属する外国籍の兵士を組み入れる計画を進めていました。1940年にドイツ国防軍が北欧および西欧での戦役を完了すると、ヒムラーはヒトラーの承認を得て、ゲルマン系外国人兵士の武装親衛隊への入隊募集を開始しました。北欧や西欧諸国の親独勢力は、それぞれの国で義勇兵募集の中心的な役割を担いました。初期の志願兵のうち、デンマーク人やノルウェー人は主にSS連隊「ノルトラント」に、オランダ人やベルギー（フランダース）出身者は主にSS連隊「ヴェストラント」に配属され、これら2個連隊は後にSS師団「ヴィーキング」の中核となりました。

1941年4月、これらの部隊とは別に、オランダ人およびフラマン人義勇兵を主体とする新たなSS義勇連隊「ノルトヴェスト」の創設が命じられました。この連隊は当初約600名で構成され、フラマン人義勇兵はドイツ国内で基礎訓練を受けた後、ポーランドへ送られさらなる訓練に励みました。

SS義勇部隊「フランダーン」誕生とレニングラード戦線

しかし、1941年7月にSS義勇連隊「ノルトヴェスト」は解隊され、フラマン人義勇兵は独立したSS義勇部隊「フランダーン」（後に「SS義勇部隊フランダーン」と改称）に再編成されました。約1,000名の兵員を擁するこの部隊の将校の半数はフラマン人でしたが、下士官の大半はドイツ人でした。彼らは武装親衛隊式の訓練を受ける傍ら、一部のフラマン人将校はドイツ国防軍の将校教育課程も履修しました。訓練中に発生したドイツ人教官によるフラマン人兵への差別や高圧的な態度は問題視され、抗議の結果、ヒムラーはドイツ人将兵にフラマン文化の学習を命じ、偏見を禁じました。1941年10月、部隊は戦闘準備が整ったと判断され、同年11月には東部戦線へ派遣され、ドイツ北方軍集団に配属されてノブゴロド近郊の戦線に配置されました。

1942年1月、ソ連軍の冬季反攻が始まると、「フランダーン」部隊はKoptsy村で初の本格的な戦闘に直面しました。零下40度にもなる極寒の中、彼らは強力なソ連軍部隊と白兵戦を交え、村を奪還しました。この戦いではフラマン人将校レイモンド・トレナーレSS少尉が友軍の誤射により戦死し、東部戦線における最初のフラマン人将校犠牲者となりました。部隊の勇敢な働きはドイツ国防軍の戦況報告でも称賛されました。

その後、「フランダーン」部隊は休養と再編成を挟みつつ、レニングラード戦線でソ連軍の攻撃に対する防衛戦を継続しました。数ヶ月にわたるソ連軍の包囲戦への参加や、ラドガ湖南西での防衛任務を経て、部隊は消耗しました。1943年3月、部隊は戦線から引き揚げられ、解隊と再編成の命令を受けました。

SS義勇突撃旅団「ランゲマルク」への再編成とウクライナ戦線

1943年3月末、「フランダーン」部隊はSS義勇突撃旅団「ランゲマルク」として再編成されました。この名称は、第一次世界大戦におけるランゲマルク村でのドイツ軍学生志願兵の犠牲に由来し、ドイツ側は愛国的な美談と捉えた一方、フラマン人にとっては自国を侵略した側に関連する名称であり、複雑な感情を伴いました。旅団は指揮官や編成を整え、旧「フランダーン」部隊の兵員に加え、新たなフラマン人義勇兵やドイツ人将兵を加えて、1943年末には2,000名を超える規模となりました。

1943年12月、旅団はウクライナ戦線へ送られ、ドイツ南方軍集団に所属して第2SS装甲師団「ダス・ライヒ」と連携し、キエフ・ジトーミル周辺で激しい防衛戦を展開しました。1944年1月にはジトーミルでソ連軍に包囲されましたが、激戦の末に包囲を突破しました。しかし、この戦闘で旅団は兵員や重装備の大部分を失い、戦闘可能な兵力は約400名にまで減少しました。旅団は1944年4月末にボヘミアへ移動し、再編成に着手しました。

ナルヴァの戦い

ボヘミアでの再編成により旅団の兵力は約1,700名に回復しましたが、1944年夏、1個増強大隊をナルヴァ戦線へ派遣する命令が下されました。これは「レーマン」戦闘団と名付けられ、ヴィルヘルム・レーマンSS大尉に率いられてエストニアのナルヴァ戦線へ急派され、第IIISS装甲軍団に配属されました。戦闘団はナルヴァ西方の強固な防衛線である「タンネンベルク線」の「孤児院の丘」に布陣しました。

1944年7月26日、戦闘団はナルヴァでソ連軍との初戦に臨みましたが、初日から激しい攻撃に晒され、指揮官や兵員に多数の死傷者を出しました。レーマンSS大尉も負傷し、21歳のゲオルク・ドハーゼSS少尉が指揮を引き継ぎ、「ドハーゼ」戦闘団として知られるようになりました。続く2日間、ソ連軍は圧倒的な戦力で「孤児院の丘」や周辺の丘陵に猛攻をかけました。

特に7月28日には、ソ連軍の大規模な戦車と歩兵による攻撃が「ドハーゼ」戦闘団の陣地である「擲弾兵の丘」に集中しました。戦闘団に残された唯一の対戦車砲（7.5cm PaK 40）は、砲長のイェフ・フロータースSS軍曹と一番砲手レミ・シュライネンSS上等兵によって驚異的な奮戦を見せ、次々とソ連軍戦車を撃破しました。ソ連軍の激しい砲撃や艦砲射撃により対戦車砲は破壊され、フロータースSS軍曹も戦死、シュライネンSS上等兵は重傷を負いながらも単独で対戦車砲を移動させ、さらに敵戦車と交戦を続けました。最終的にこの対戦車砲も破壊され、シュライネンは吹き飛ばされました。彼の周囲には10両以上の敵戦車が残骸を晒していました。その後も「孤児院の丘」奪還のための反撃が試みられましたが、失敗に終わりました。

7月29日、ソ連軍の攻撃が最終段階に入ると、ドイツ軍の戦車部隊が反撃を行い、ソ連軍を後退させました。この際、重傷を負って放置されていたシュライネンSS上等兵が発見され、救出されました。タンネンベルク線を巡る攻防戦は双方に甚大な損害をもたらし、特に「ドハーゼ」戦闘団のフラマン人兵士の多くが戦死または捕虜となりました。捕虜となった者たちの多くはソ連の収容所で過酷な生活を強いられ、終戦から長い年月を経て帰国できたのはごく少数でした。レミ・シュライネンSS上等兵はそのナルヴァでの功績により、最高位の勲章である騎士鉄十字章を授与されました。

師団への昇格と終戦

ナルヴァでの激戦を経て後方へ引き揚げられた旅団は、1944年秋に連合軍の進攻によりドイツへ逃れてきたベルギーのフラマン人らを編入し、師団へと拡充されることが決定しました。こうして第27SS義勇擲弾兵師団「ランゲマルク」が誕生しましたが、多数の新兵は十分な訓練を必要としていました。師団が戦線に戻る準備ができたのは1945年1月に入ってからでした。

師団はオーデル川下流付近のシュテッティンに配備され、第IIISS装甲軍団を中核とする第11SS装甲軍に所属しました。1945年2月、師団は包囲された部隊を救出する「ゾンネヴェンデ作戦」に参加しましたが、アルンスワルデ周辺で戦闘は膠着し、ソ連軍による包囲の危険が生じたため作戦は中止され、師団は退却を強いられました。

3月に入るとソ連軍の猛攻により師団はさらに押し戻され、絶望的な撤退戦を強いられながらも、ソ連軍に多大な損害を与えつつオーデル川東岸の最終防衛線であるアルトダムへ退却しました。彼らはアルトダムを約2週間保持しましたが、その間に再び甚大な損害を被りました。3月19日、師団はオーデル川西岸へ撤退し、全滅の危機に瀕しました。残存部隊は戦闘団としてメクレンブルクへ退却を続けましたが、1945年5月8日、ソ連軍に降伏し、その歴史に幕を下ろしました。

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