第30回全国高等学校野球選手権大会

1948年8月13日から8月20日までの8日間、甲子園球場では記念すべき大会が開催されました。これが、戦後日本の学制改革を経て、旧制中等学校から新制高等学校へと移行して初めて行われた全国高等学校野球選手権大会、その第30回大会です。

新時代の幕開けと「栄冠は君に輝く」

この大会は、制度変更に伴い名称を「全国中等学校優勝野球大会」から「全国高等学校野球選手権大会」へと改め、新たなスタートを切りました。この歴史的な転換点を記念して、大会歌も一新されることになり、全国からの公募によって選ばれたのが、作詞・加賀大介、作曲・古関裕而による不朽の名曲「栄冠は君に輝く」です。この歌は、以降、高校球児たちの夢舞台を彩るシンボルとして歌い継がれていくことになります。

大会の規模も拡大され、地方大会の区分にも変更が加えられました。特に、四国地方が初めて南北に分割されたほか、それまで山陽と山陰に分かれていた中国地方は東西に再編されました。また、神奈川県が南関東から、愛知県が東海から、福岡県が北九州からそれぞれ独立した予選地区となるなど、より多くの高校に甲子園への道が開かれました。

小倉、史上5校目の連覇と福嶋投手の偉業

今大会で最も注目を集めたのは、前年の第29回大会で優勝した小倉高校（当時の校名は小倉中でしたが、学制改革で変更）の戦いです。小倉は、難関を勝ち抜き、見事に史上5校目となる大会連覇を達成しました。この快挙の立役者となったのが、エースの福嶋一雄投手です。

福嶋投手は、今大会で驚異的なピッチングを披露しました。出場した全5試合全てを完封するという離れ業を成し遂げ、一度も失点を許さずにチームを優勝へと導きました。その無失点記録は、5試合合計45イニングに及び、これは戦前の第25回大会で海草中の嶋清一投手が樹立した記録に並ぶ大会記録タイとして、高校野球史に燦然と輝いています。福嶋投手は、後に野球殿堂入りを果たすことになりますが、この大会での圧倒的な投球は、その輝かしいキャリアの序章とも言えるでしょう。

熱戦を彩った本塁打

大会では、幾多の熱戦が繰り広げられ、いくつかの本塁打も飛び出しました。第1号は1回戦で金沢一の沖田信雄選手、続く第2号は同じく1回戦で函館工の佐藤巻一選手によって放たれました。2回戦では西京商の種田吉富選手が第3号を、準々決勝では桐蔭の西村修選手が第4号本塁打を記録しました。

新制高等学校として迎えた最初の大会は、学制改革や地方予選区分の変更といった制度的な変化と、小倉高校の連覇、特に福嶋投手の歴史的な完封記録という劇的な展開が相まって、戦後復興期における高校野球の新たな時代を象徴する大会として、長く記憶されることとなりました。

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