第35回主要国首脳会議

第35回主要国首脳会議（ラクイラ・サミット）

第35回主要国首脳会議は、通称「ラクイラ・サミット」として知られ、2009年にイタリアのアブルッツォ州に位置する都市、ラクイラで開催されました。世界主要8カ国（日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、ロシア）の首脳が一堂に会し、当時の国際的な主要課題について議論しました。

開催地の変更とその背景

当初、この会議はサルデーニャ州ラ・マッダレーナでの開催が予定されており、既に現地では準備が進められていました。しかし、イタリアのシルヴィオ・ベルルスコーニ首相は、開催のおよそ3ヶ月前にあたる2009年4月、突如として開催地をラクイラへ変更することを発表しました。この年の4月にラクイラとその周辺地域を襲ったマグニチュード6.3の地震は、甚大な被害をもたらしていました。ベルルスコーニ首相は、サミットを被災地で開催することで、ラクイラの復興を力強く後押ししたいとの考えを示しました。また、開催地変更によって、準備にかかる費用を約2億2000万ユーロ削減できるという副次的な効果も理由として挙げられました。

ただし、開催地が地震の被災地であるラクイラに変更されたことにより、新たな課題も生じました。会議期間中も余震が頻繁に発生していたため、万一、大規模な余震が発生した場合には、首脳や随行員を含む全ての参加者を一時的にローマへ避難させ、そこで会議を継続するという緊急時の対応計画が策定されました。イタリアの防災当局は、マグニチュード4以上の余震が発生した場合に、全員を避難させる方針であることを明確に表明していました。

会議のシンボル

このサミットのロゴデザインには、長寿と信頼を象徴する亀が描かれました。また、ロゴには当初の開催予定地であったラ・マッダレーナと、実際の開催地となったラクイラ、両方の地名が併記されています。これは、会議の開催地が変更された経緯を反映したデザインであると言えます。

主な参加者

G8各国の首脳に加え、欧州連合からも代表が出席しました。

イタリア閣僚評議会議長：シルヴィオ・ベルルスコーニ（議長）
フランス共和国大統領：ニコラ・サルコジ
アメリカ合衆国大統領：バラク・オバマ
イギリス首相：ゴードン・ブラウン
ドイツ連邦首相：アンゲラ・メルケル
日本国内閣総理大臣：麻生太郎
カナダ首相：スティーヴン・ハーパー
ロシア連邦大統領：ドミートリー・メドヴェージェフ
欧州委員会委員長：ジョゼ・マヌエル・ドゥラン・バローゾ
欧州理事会議長：フレドリック・ラインフェルト

ファーストレディを巡る出来事

主要国首脳会議では、参加首脳の配偶者であるファーストレディ（またはファーストジェントルマン）が会議に随伴するのが慣例となっています。しかし、議長国イタリアのベルルスコーニ首相は当時、夫人との離婚手続き中であったため、夫人がラクイラに随伴しませんでした。この結果、議長国でありながらファーストレディが不在という、異例の状況が発生しました。

ベルルスコーニ首相は、この状況に対応するため、雇用機会均等大臣のマーラ・カルファーニャ氏をホステス役に抜擢しました。カルファーニャ氏は、他の国々のファーストレディや配偶者らがラクイラ地震の被災地を訪問する際などのアテンドを担当しました。ところが、フランスのカーラ・ブルーニ大統領夫人は、ベルルスコーニ首相の一連の対応に対し不信感を抱いたとされ、カルファーニャ氏が主導するファーストレディ団体の被災地訪問には加わらず、単独で被災地の慰問を行いました。このカーラ夫人の行動は、一部のイタリアメディアから「無作法である」との批判を受けることとなりました。

ちなみに、カーラ・ブルーニ夫人は前年のG8サミット（北海道洞爺湖サミット）も自身のCDアルバム発売イベントを理由に欠席しており、後日、議長を務めた日本の福田康夫首相と夫人の貴代子氏に宛てて、欠席を詫びる書簡を送付した経緯があります。

国際情勢を背景とした議論

この第35回サミットは、2007年から続く世界金融危機が依然として尾を引いている状況下で開催されました。また、開催直前の2009年7月初旬には、中国新疆ウイグル自治区で大規模な騒乱が発生しており、こうした緊迫した国際情勢も会議での議論の背景にあったと考えられます。

まとめ

第35回主要国首脳会議は、ラクイラ地震の被災地で開催されたこと自体が大きな特徴であり、復興への国際的な連帯を示す場となりました。また、議長国のファーストレディ不在や、これに関連した各国の配偶者間のエピソードなど、儀礼的な側面においても例外的かつ注目を集める出来事がありました。

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