第38回NHK紅白歌合戦

第38回NHK紅白歌合戦

1987年12月31日に行われた第38回NHK紅白歌合戦は、NHKホールから生放送され、視聴者に多くの印象を残した。本年のイベントは視聴率の低下に直面し、これを打破するために「紅白改革」として出演者の大幅な変更と多様なジャンルの音楽を取り入れて挑んだ。しかし、改革の試みは期待された成果を得られず、関東地区での視聴率は55.2%となり、前回に比べて減少した。

司会者について

今回の司会は紅組に和田アキ子、白組に加山雄三、総合司会には吉川精一が選ばれた。和田は以前から紅組の司会候補に挙がっており、加山も2年連続で白組担当となった。そのため、彼が単独で白組を進行するのは今回が初めてであった。和田と加山の身長差が良いバランスを生んでいることもこの組み合わせの決定に寄与した。

もともと、NHKのアナウンサーのみで司会陣を固める案も存在したが、斬新さが欠けるとの理由で断念され、最終的に和田や他の著名歌手が選ばれた。この年からテレビでの実況が行われるのは最後となり、翌年からはラジオでの実況へと切り替えられた。

出演歌手と選考過程

今回は出場歌手の選考方法に大きな変更が加えられた。視聴者の意見を聞くための「ご意見を伺う会」が廃止され、従来の視聴者アンケートも参考程度にされる新たな方式が採用された。これにより、実力派のシャンソン歌手やオペラ歌手などが参加し、出演者の顔ぶれが革新された。

紅組には由紀さおりが9年ぶりの復帰を果たし、布施明や北島三郎もこの回に登場した。一方で、紅白の顔となっていた島倉千代子や三波春夫が辞退し、これにより紅組では小柳ルミ子が、白組では村田英雄が最多出場者となる結果となった。これらの出来事は特に注目され、島倉の辞退は彼女自身の意思に基づくものであり、落選の恐れを感じる状況であったことが後に明らかになった。

ステージのクライマックス

紅組トリの曲は和田アキ子の「抱擁」で、白組トリは五木ひろしの「追憶」であった。この二曲は共に作詞家・阿久悠の作品であり、そんな特別な瞬間がこの年の紅白を更に印象深いものにした。紅組が優勝し、和田は感極まって涙を流して喜びを表現した。

結果と評価

第38回の紅白歌合戦は、前年と比較して視聴率が低下したものの、司会者や多彩な出演者による新たな試みが多くの印象を与えた。後年まで多くのファンに愛され続け、再放送されることもあった。優勝旗を手にした和田の涙と歓喜の表情は、この年の紅白の象徴的な場面として記憶に刻まれた。次の第39回では、和田と加山が再び司会を務めることが決定し、その持ち味を引き続きファンに提供することとなった。

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