第43師団 (日本軍)

第43師団：サイパン島で散った悲劇の師団

第43師団は、1943年（昭和18年）に編成された大日本帝国陸軍の師団です。太平洋戦争中、日本本土の防衛力強化を目的として設立されましたが、戦局の悪化に伴い、南方戦線へと投入され、サイパン島の戦いでその短い歴史を閉じました。

編成と初期の活動

1943年5月14日、第43師団は、昭和18年軍令甲第45号に基づき、他の3個師団とともに臨時編成が命じられました。当時、多くの師団が海外へ出征しており、手薄となった日本本土の防備を固めることが急務でした。同年6月10日、第43師団は留守第3師団と第63独立歩兵団を基幹に名古屋で編成され、中部軍に所属しました。名古屋師管の防衛や、師管での徴兵など、管区業務を担当しました。

サイパン島への派遣と改編

1944年4月7日、戦局の激化に伴い、第43師団は昭和19年軍令甲第39号により臨時動員を命じられ、第31軍に編入されました。絶対国防圏の要であるサイパン島の防衛を担うことになり、派遣されることになりました。この際、師団長が皇族の賀陽宮恒憲王から、斎藤義次中将に交代しました。また、師団の編成も大幅に変更され、砲兵連隊や工兵連隊を解体し、歩兵連隊に編入、戦闘団風の海洋師団に改編されました。

師団主力は東松8号船団により無事に輸送されましたが、歩兵第118連隊を中心とした第2次輸送部隊は第3530船団で運ばれる途中、アメリカ軍潜水艦の攻撃により甚大な損害を受けました。第43師団は、独立混成第47旅団と共に北部マリアナ地区集団を構成し、サイパン島防衛の任に就きました。

サイパン島の戦いと玉砕

1944年6月15日、アメリカ軍がサイパン島に上陸を開始。第43師団は守備隊主力として激戦を繰り広げましたが、水際での戦闘で大きな損害を被りました。その後も、アメリカ軍の猛攻に抗戦を続けましたが、戦況は圧倒的に不利でした。同年7月5日、全軍総突撃の命令が下され、大本営に向け「我ら玉砕をもって太平洋の防波堤たらんとす」と打電、組織的な戦闘を終え、事実上全滅しました。

師団の概要

歴代師団長

賀陽宮恒憲王 中将：1943年6月10日 - 1944年4月6日
斎藤義次 中将：1944年4月6日 - 1944年7月6日（自決）

参謀長

太田公秀 大佐：1943年6月10日 - 1943年10月15日
鈴木卓爾 大佐：1943年10月15日 - 1944年7月18日（戦死）

最終所属部隊

歩兵第118連隊（静岡）：伊藤豪大佐
歩兵第135連隊（名古屋）：鈴木栄助大佐
歩兵第136連隊（岐阜）：小川雪松大佐
第43師団通信隊：鷲津吉光大尉
第43師団輜重隊：山本光男大尉
第43師団兵器勤務隊：村瀬兼松大尉
第43師団経理勤務部：大川英夫中佐
第43師団野戦病院：深山一孝中佐

まとめ

第43師団は、その短い活動期間の中で、日本本土の防衛から南方戦線での激戦まで、めまぐるしく環境が変化しました。特に、サイパン島の戦いでは、圧倒的な戦力差の中で玉砕という悲劇的な結末を迎えました。その将兵たちの壮絶な戦いは、太平洋戦争における悲劇を象徴する出来事として、今に伝えられています。

参考資料

秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』第2版、東京大学出版会、2005年。
外山操・森松俊夫編著『帝国陸軍編制総覧』芙蓉書房出版、1987年。
* 外山操編『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』芙蓉書房出版、1981年。

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