絶対国防圏

絶対国防圏とは

絶対国防圏（ぜったいこくぼうけん）とは、太平洋戦争中に日本が本土防衛のために設定した重要な地域を指します。この概念は、戦争が進むにつれ、劣勢な状況にあった大日本帝国が、戦争を継続するために必要な地域を守るために策定されました。

概要

1943年9月30日に行われた閣議および御前会議で、日本政府は「帝国戦争遂行上太平洋及印度洋方面に於て絶対確保すべき要域」として、千島、小笠原、内南洋、西部ニューギニア、スンダ、ビルマなどを含む絶対国防圏を設定しました。この地域は、内南洋のマリアナ諸島やカロリン諸島、西部ニューギニア以外の地域を中心に位置しています。

当時、日本の海軍と陸軍はそれぞれ異なる戦場を担当していましたが、絶対国防圏は主に陸軍の視点で設定されたとされます。しかし、この防衛策には、実行するための攻撃力や防御力、補給線、戦略思想などが不足しており、シーレーン防衛能力も乏しい状態でした。これによって、大規模な戦場が形成されることが不可能となりました。

また、絶対国防圏成立後も、海軍はソロモン諸島での戦いに焦点を当て、防衛体制の構築が後回しとなりました。特にサイパン島は、アメリカ軍による空襲のための重要な危険な拠点として認識されていましたが、陸軍は中国大陸の作戦に集中し、必要な防衛力の強化が十分に進まず、アメリカ軍の侵攻に対処できない状況に陥りました。

日本守備隊の倍の兵力を持つアメリカ軍がマリアナ諸島に侵攻した際、日本兵は食料や装備の不足に苦しみながらも、徹底抗戦を続けました。しかし、制空権と制海権を失っていたため、マリアナ沖海戦やサイパンの戦いで大きな敗北を喫し、絶対国防圏の維持は無意味になりました。これにより、日本の敗戦が見えてきたことで、1944年7月18日には東條英機が内閣総理大臣を辞職することとなりました。

評価

絶対国防圏の設計は、当時の軍指導者によって懸念されていました。例えば、第四航空軍司令官の寺本熊市は、「制空権がなければ、孤立した地域となるだけだ」と指摘しており、その後の日本の戦略における航空戦力の不足が致命的な結果をもたらしたことが浮き彫りになりました。また、戦後に大井篤が振り返る中で、航空戦力の重要性が強調され、「名ばかりの防御策では実効性を持たない」との懸念が強調されました。

日本の戦争指導層が策定したこの防衛構想は、結果的に多くの困難を抱えることとなり、戦局が厳しくなる中での日本の戦略の脆弱性を示しています。

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