第59師団 (日本軍)

第59師団

第59師団は、大日本帝国陸軍の師団の一つで、太平洋戦争中に中国大陸で編成されました。この師団は、占領地の警備と治安維持を主な目的とする治安師団として、独立混成旅団を改編して作られました。以下に、その詳細な歴史、編制、活動について解説します。

概要

第59師団は、独立混成第10旅団を基に編成され、その前身である独立混成第10旅団は、中国山東省の済南地区で警備や治安維持を担当していました。師団の補充業務は東京師管が担当し、編成は2つの歩兵旅団（それぞれ4つの独立歩兵大隊で構成）を持つ丙師団でした。特筆すべきは、連隊に下賜される軍旗を持たない兵団であった点です。これは、通常の甲師団とは異なり、砲兵力を欠いた治安師団としての特徴を示しています。

沿革

1942年2月2日、第59師団は済南で編成され、司令部も同地に置かれました。独立混成第10旅団の任務を引き継ぎ、済南付近の警備と治安維持に当たりました。同年6月初旬には、新泰、萊蕪県東方山地、次いで館陶県地区での討伐作戦に従事し、同年8月には、一部兵力をもって第1次・第4次魯中作戦（于学忠捕捉作戦）に参加しました。同年11月中旬からは第4次魯東作戦に参加し、済南地区から山東半島突端まで進撃、中国軍を包囲する戦果を上げました。

同年12月下旬には、館陶県の駐屯地で転属を不満とする兵士による叛乱が発生し、2名が死刑、直属上司の中隊長が自決するという事態となりました。この事件の責任を取り、軍司令官、師団長、旅団長、大隊長が更迭されました。

1943年1月には、軍直轄部隊との共同作戦で、大王村（済南の北東）地区の共産党軍を包囲急襲。同年4月からは、春季太行作戦、済南章邱地区の剔抉作戦、衣剿共作戦などの治安粛正作戦に従事しました。7月中旬からは、歩兵第54旅団の主力部隊が第35師団長の指揮下に入り、十八夏太行作戦に参加。省境付近の共産党軍を掃討しました。同年11月中旬には、一部兵力が軍直轄部隊と協同して十八秋魯中作戦に参加しました。

1944年1月下旬には、河南作戦（一号作戦の第一期）が開始されたことに伴い、北支那方面軍の兵力抽出により、師団の警備担任地域は山東全域と旧黄河下流地帯に拡大しました。また、一部兵力は河南作戦にも参加。同年3月下旬から8月中旬にかけては、衣剿共八号～十一号作戦、その後は十九夏山東作戦、10月下旬からは十九秋山東作戦と、治安粛正作戦に継続して従事しました。

1945年3月には、師団迫撃砲隊が編成され、師団に編入されました。同年5月には、師団全力による秀嶺作戦中に、北朝鮮への転用が命令され、同月30日には関東軍隷下へ編入。6月18日には第34軍隷下となり、7月初旬からは済南から鉄道輸送で朝鮮咸鏡南道咸興に到着し、同地区の警備と陣地構築中に終戦を迎えました。

師団概要

歴代師団長

柳川悌 中将：1942年4月1日 - 1943年3月1日
細川忠康 中将：1943年3月1日 - 1945年3月31日
藤田茂 中将：1945年3月31日 - 終戦

参謀長

関谷順 中佐：1942年4月13日 - 1943年6月10日
江田稔 中佐：1943年6月10日 - 1945年1月12日
武部松雄 中佐：1945年1月12日 - 終戦

最終司令部構成

参謀長：武部松雄大佐
参謀：村上勇二少佐
参謀：谷垣迪男少佐
高級副官：伊藤久次郎少佐

最終所属部隊

歩兵第53旅団（東京）：上坂勝少将
独立歩兵第41大隊（東京）：栗木卓男大尉
独立歩兵第42大隊（佐倉）：風神泰彦大尉
独立歩兵第43大隊（佐倉）：草野清少佐
独立歩兵第44大隊（甲府）：原口準三大尉
歩兵第54旅団（甲府）：長島勤少将
独立歩兵第45大隊（甲府）：酒井利郎少佐
独立歩兵第109大隊（東京）：坪井正佐大佐
独立歩兵第110大隊（甲府）：植野重利少佐
独立歩兵第111大隊（佐倉）：藤田宏大佐
第59師団迫撃砲隊：芳信雅之大尉
第59師団工兵隊：桑原実少佐
第59師団通信隊：野口政喜少佐
第59師団輜重隊：小池忠太郎少佐
第59師団野戦病院：森富士雄軍医少佐
第59師団病馬廠：森磐次獣医大尉

参考文献

防衛研修所戦史室『戦史叢書 4 一号作戦（1） 河南の会戦』（朝雲新聞社、1967年）
防衛研修所戦史室『戦史叢書 18 北支の治安戦（1）』（同上、1968年）
防衛研修所戦史室『戦史叢書 50 北支の治安戦（2）』（同上、1971年）
防衛研修所戦史室『戦史叢書 89 支那事変陸軍作戦（2）』（同上、1976年）
外山操・森松俊夫編著『帝国陸軍編制総覧』芙蓉書房出版、1987年。
秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』第2版、東京大学出版会、2005年。
福川秀樹『日本陸軍将官辞典』芙蓉書房出版、2001年。
外山操編『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』芙蓉書房出版、1981年。
本多勝一・長沼節夫『天皇の軍隊』（朝日文庫、1991年） ISBN 4-02-260661-4
伊藤桂一『「衣兵団」の日中戦争』（光人社、2007年） ISBN 978-4-7698-1331-6

関連項目

* 大日本帝国陸軍師団一覧

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