笹子トンネル (中央自動車道)

笹子トンネル：中央自動車道を彩る長大トンネルとその歴史

山梨県の大月市と甲州市を結ぶ中央自動車道（西宮線）にある笹子トンネルは、同路線で恵那山トンネルに次ぐ長さを持つ長大トンネルです。下り線4717m、上り線4784mという全長を誇り、2車線で構成されています。

交通状況と歴史

2010年の道路交通センサスによると、笹子トンネルの1日の交通量は上下線合わせて4万台を超えます。通常時は時速70kmの速度制限が設けられていますが、勾配の影響もあり、特に土日祝日には上り線で長時間の渋滞が発生しやすいのが現状です。東京方面への上り線は、小仏トンネルからの渋滞が連鎖することもあります。

かつては、週末や連休の午後、上り線で甲府側に車線規制が行われていました。これは、トンネル内の渋滞による事故や環境悪化を防ぐため、トンネル手前で渋滞を発生させることで交通量を調整する対策でした。しかし、2003年に上野原IC～大月IC間の上り線が改良され、3車線化と勾配の抑制が実現したことで、渋滞は解消され、車線規制は廃止されました。トンネル内ではAMラジオ放送の再送信も行われています。

1972年に着工、1975年に完成し、1977年に供用開始された笹子トンネル。2005年には日本道路公団の民営化に伴い、中日本高速道路株式会社（NEXCO中日本）に管理が移管されました。

構造と換気

笹子トンネルは、当初、横流換気方式を採用していました。トンネル上部を仕切り、送気・排気ダクトを設ける構造でしたが、2012年の事故後は、ジェットファンによる縦流換気方式に変更されました。

トンネル内には最大2%の勾配が設けられており、これは排気ガスの滞留を防ぐための工夫です。施工過程では、200mに渡る破砕帯や毎分6トンの湧水など、困難な地質条件への対応が求められました。会計検査院からは、かつて建設時の監督体制に問題があったとの指摘も受けています。

2012年の天井板崩落事故

2012年12月2日、上り線トンネルで天井板の大量崩落事故が発生しました。この事故により、9名の死者と2名の負傷者を出しました。事故原因究明では、NEXCO中日本の点検体制に問題があったことが判明し、大きな社会問題となりました。事故後、下り線トンネルでも点検が行われ、天井板のボルトの緩みなどが発見されました。その後、両方のトンネルで修復工事が行われ、上り線は2013年2月、下り線は2015年12月に復旧しました。下り線トンネル入口には、二次事故防止のため、信号機が設置されました。これは山梨県内高速道路トンネルでは初の事例です。2019年には、事故犠牲者を追悼する慰霊碑が完成しています。

現在

現在、笹子トンネルは、事故を教訓に安全対策が強化され、運行されています。定期的な点検やメンテナンス、そして最新の技術を導入することで、安全性を確保することに努めています。しかし、長大トンネルであることによる課題は依然として残っており、交通量の増加や渋滞への対策など、継続的な取り組みが求められています。

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