笹村草家人

笹村草家人の生涯と芸術

笹村草家人（ささむら そうかじん）は、1908年（明治41年）2月11日、東京市芝区神明町（現在の港区浜松町）に生まれました。本名は良紀（よしき）。父は歌人・絵師の笹村銕熊（ささむら てっくま、号は良水）です。代々文筆の家系に生まれた草家人は、幼い頃から芸術的な環境の中で育ちました。

1932年（昭和7年）に東京美術学校（現在の東京芸術大学）彫刻科を卒業。在学中は、教授たちの作風に反発しながらも、独自の表現を模索しました。卒業後は、同校の助教授として教鞭を執り、後進の育成に尽力しました。

彫刻への情熱と独自の表現

草家人が彫刻を志すきっかけとなったのは、高村光太郎の著書「ロダン」との出会いでした。この本に感銘を受けた彼は、彫刻の道へと進みます。しかし、在学中は、朝倉文夫や北村西望といった教授たちの作風に激しく反発し、独自の表現を追求しました。

草家人の彫刻に対する考え方は、彼自身の言葉にも表れています。「人間に三種あり、青年男女と子供は前世からこの世に押し出した生命の姿。他の一般はこの世の経験により我執を示す姿。極めて稀な第三は不如意な自分や人類を愍みで見下ろす顔で、これが制作の最奥の動機になっていることを悟った」と述べています。彼は、感情的なものや説明的な要素を排除し、対象そのものが持つ本質的な美しさを表現しようとしました。

主な作品と晩年

草家人の代表的な作品には、「津田非仏老人」「津田左右吉先生米寿像」「最後の渋沢敬三先生」などがあります。これらの作品は、対象の個性を捉えながらも、普遍的な美しさを追求した、静謐な印象を与えます。

また、草家人は、後世の国民のために、大学退職後、8年もの歳月を費やして「明治天皇像」を完成させ、明治神宮に奉献しました。これは、彼の芸術家としての使命感を示すエピソードと言えるでしょう。

文筆家としても才能を発揮し、簡潔で明瞭な文章をよくしました。また、民俗学や禅にも深い関心を持ち、陶淵明を愛し、山梨県上野原の静かな山中で暮らしました。

著書には「笹村草家人彫刻作品集」の他、随想録「炉辺閑話 上・下」や、「静坐:岡田虎二郎その言葉と生涯」「笹村草家人文集 上･下」などがあります。

1975年（昭和50年）9月26日、その生涯を閉じました。享年67歳。

碌山美術館への貢献

草家人は、彫刻家であるとともに、碌山美術館の創設に尽力した人物としても知られています。この美術館は、彼の芸術に対する情熱と、後世にその足跡を伝えたいという願いが込められた場所と言えるでしょう。

外部リンク

碌山美術館建設のあゆみ - 1957年の笹村草家人を記録した映像
（注：このリンクは架空のものです。実際のリンクは「碌山美術館建設のあゆみ」で検索してください。）

笹村草家人の作品は、現代においても多くの人々に感銘を与え続けています。彼の芸術に対する真摯な姿勢と、独自の表現は、日本の近代彫刻史において重要な位置を占めています。

もう一度検索