笹森清

笹森 清（ささもり きよし）

笹森 清（1940年10月21日 - 2011年6月4日）は、日本の労働運動において、現場からナショナルセンターのトップに至るまで、長年にわたり中心的な役割を担った人物です。そのキャリアは、一企業の労働組合から始まり、電力関連産業全体、そして日本全体の労働者を代表する組織へと広がりました。政府の諮問機関や内閣特別顧問としても活躍し、社会の広範な分野に影響を与えました。

東京都で生を受けた笹森氏は、埼玉県川越市に移り住み、埼玉県立川越高等学校を卒業しました。1960年に東京電力株式会社に入社後、すぐに労働組合活動に積極的に参加します。東京電力労働組合において、組織運営の中枢を担うようになり、1986年には書記長、そして1989年には委員長に就任しました。この間の経験が、後の広範な活動の礎となります。

東京電力労働組合での実績を背景に、笹森氏の活動舞台は電力産業全体へと移ります。1993年には全国電力関連産業労働組合総連合（電力総連）の会長に就任し、電力産業で働く人々の権利向上と労働条件改善に尽力しました。同時期、日本の労働界を代表する組織である日本労働組合総連合会（連合）においても要職を歴任します。1993年には連合の副会長に就任し、組織運営に深く関わるようになり、1997年には連合の事務局長として、連合の日常業務と政策実現に向けた実務を取り仕切りました。

そして2001年、笹森氏は日本労働組合総連合会の第4代会長に選出され、日本の労働運動の顔として活動することになります。2005年までこの重責を担い、労働者の権利保護、雇用問題、社会保障制度改革など、多岐にわたる政策課題に対して連合の立場から提言を行い、社会的な議論をリードしました。会長職退任後も、連合の運営に対する豊富な経験から、連合顧問として組織を支えました。

労働界での活動に加え、笹森氏は国の重要な政策形成にも関わりました。財政制度等審議会、法制審議会、郵政行政審議会、社会保障の在り方に関する懇談会などの政府の諮問機関の委員を歴任し、専門知識と労働者の視点を提供しました。また、労働者福祉中央協議会の会長や国際労働財団評議員、松下政経塾評議員など、様々な民間の団体や公益法人においても重要な役割を果たしました。特に、NPO法人エコキャップ推進協会の理事長を務めるなど、市民活動への理解と貢献も見られました。

2010年には、当時の内閣総理大臣であった菅直人氏から内閣特別顧問就任を要請され、これを受諾。政府に対する政策アドバイスや労働界との連携強化に貢献しました。

2011年6月4日、膵臓癌により70歳で逝去されました。その長年の労働運動における功績と、社会への多大な貢献が称えられ、没後、日本政府から従三位の位階が贈られるとともに、国家への顕著な功労をたたえる旭日大綬章が追贈されました。

彼の個人的な主張として知られているものの一つに、選択的夫婦別姓制度への賛成があります。職場における旧姓使用に伴う書類上の様々な不都合を具体的に指摘し、制度導入の必要性を訴えました。

彼の主要な経歴は以下の通りです。

1960年: 東京電力株式会社入社。
1982年: 全日本民間労働組合協議会 事務局次長に就任。
1986年: 東京電力労働組合 書記長に就任。
1989年: 東京電力労働組合 委員長に就任。
1993年: 全国電力関連産業労働組合総連合 会長、日本労働組合総連合会 副会長に就任。
1997年: 日本労働組合総連合会 事務局長に就任。
2001年: 日本労働組合総連合会 会長（第4代）、財政制度等審議会 委員、司法制度改革推進本部 顧問に就任。
2002年: 法制審議会 委員に就任。
2003年: 郵政行政審議会 委員に就任。
2004年: 社会保障の在り方に関する懇談会 委員に就任。
* 2010年: 内閣特別顧問に就任。

笹森清氏は、激動する日本の社会経済状況の中で、労働者の権利と福祉の向上に生涯を捧げ、その活動は多方面にわたりました。彼の功績は、日本の労働運動の歴史に深く刻まれています。

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