等伯

小説『等伯』の概要

『等伯』は、安部龍太郎が著した、安土桃山から江戸初期にかけて生きた絵師・長谷川等伯の人生を描く長編小説です。この作品は2012年に日本経済新聞出版社から上下2巻として刊行され、同年には第148回直木賞を受賞しました。

連載から書籍化までの軌跡

本作は、2011年1月から2012年5月にかけて日本経済新聞の朝刊で連載されました。その後、加筆修正を経て、2012年9月に単行本として出版され、2015年には文庫化されました。この小説の舞台は、戦国時代の永禄年間から江戸初期の慶長年間にかけており、主に能登、越中、京、大坂、堺などが描かれています。

作者の想い

安部龍太郎はこの作品に取り組む中で、自身の作家としての成長を実感したと語っています。「等伯に作家としての力量を上げてもらった」と述べ、受賞したことに対しても「このような晴れやかな日が僕の人生に訪れるとは思っていなかった。読者に感謝の気持ちでいっぱい」と喜びを表しています。尽きない感謝と共に、作品に対する真摯な姿勢が感じられます。

執筆の困難さ

また、安部は長谷川等伯に関する文献が少なかったため、さまざまな水墨画や仏画に基づき、深く向き合いながら物語を編纂していったことは、執筆の大きな挑戦であったと語っています。著者自身が感じた作業の「虚心坦懐に向き合う」姿勢は、作品の中にも色濃く反映されています。

主要登場人物

物語には多くの重要なキャラクターが登場します。主人公である長谷川又四郎信春（後の等伯）は絵師として苦悩しながら成長していく人物です。彼の妻・静子や長男・久蔵、二番目の妻・清子、さらには実兄・奥村武之丞、御用絵師の狩野永徳、天下人・豊臣秀吉、茶人・千利休などが、物語に散りばめられた人間ドラマを彩ります。

父親や妻、そして時代の影響を受けながら、信春は絵師としての道を追求し、数々の試練に立ち向かう姿が描かれています。彼の周囲には、歴史的な人物も数多く存在し、その関係性が物語の厚みを増しています。

書誌情報

この作品は、日本経済新聞出版社より2012年に刊行された単行本があり、上巻（ISBN 978-4-532-17113-1）と下巻（ISBN 978-4-532-17114-8）があります。また、文春文庫からは2015年に文庫版が出版されており、上巻（ISBN 978-4-167-90442-5）と下巻（ISBN 978-4-167-90443-2）として手に取ることができます。

読者に、多くの魅力的なキャラクターと共に、信春の生涯を通じてその時代の文化や風俗を感じさせるこの作品は、歴史小説としてだけでなく、人間ドラマとしての深さも持っているのです。

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