筑

筑（ちく）について

筑は、古代中国において用いられていた打弦楽器で、今は使用されていない楽器です。基本的には琴に似た形状をしていますが、音を出す方法が異なります。筑は弦を弾くのではなく、竹の棒で弦を叩くことによって音を生成します。この楽器の詳細は、文献によって異なり、弦の数についても5弦、13弦、あるいは21弦と記されていることがあります。

歴史的背景

筑は中国の戦国時代にはすでに存在していたとされており、『戦国策』には、斉の都で人々が竽や瑟、筑、琴など様々な楽器を演奏していた記録があります。このことからも筑の重要な位置づけが伺えます。

筑の演奏者の中で特に有名なのは高漸離で、彼は友人の荊軻を送る際に筑を演奏したことで知られています。高漸離はまた、秦の始皇帝に接近する際に筑を用いて暗殺しようと試みましたが、失敗し命を落としました。さらに、漢の劉邦が「大風歌」を演奏する際にも筑が伴奏に使用されていました。

考古学的発見

考古学の観点から見ても、筑の重要性が明らかになっています。1973年には馬王堆3号墓から、明器としての筑が発見されました。この筑は、胴体が一本の木材から作られており、長さが34cm、厚さが3cmで実用品ではなく、副葬品としての役割を果たしていました。また、1976年には広西貴県の羅泊湾にある漢墓から「越筑」という明器の断片も見つかっています。そして1993年には、長沙市望城坡古墳の前漢時代の長沙王墓から、本物の筑が初めて出土しました。この筑は93.4cmの長さを持ち、5弦の構造を有しています。

さらに、馬王堆1号墓や連雲港からは、筑を演奏している様子を描いた絵が発見されています。これらの考古学的資料は、筑が古代中国の文化においてどのような位置を占めていたかを理解するのに大いに寄与しています。

様々な時代での筑の位置づけ

筑は隋・唐時代まで「清商楽」の楽器としての役割を維持していましたが、その後は次第に使用されなくなっていきました。筑の消滅は、音楽文化の変遷を反映しており、時代と共に楽器の役割や種類も変化していったことを示しています。

国や文化を超えて、古代の楽器たちは、音楽が持つ普遍的な魅力と人々を結びつける力を今でも示し続けています。筑もその一部として、歴史の中で重要な役割を果たしていたのです。

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